北欧の教育「フォルケホイスコーレ」が話題。人と社会、自然とのつながりを取り戻す大人の学び舎「School for Life Compath」 北海道東川町
北海道東川町に、4年前に開講したSchool for Life Compathという大人の学び舎がある。デンマーク発祥の「フォルケホイスコーレ」という北欧独自の教育機関がモデルとなっており、近年、日本でも注目が高まり、各地に開講の動きがある。なかでも移住者が増加するまちとして注目を集める東川町で、まちの人々とつながりながら学びのコースをつくっているのがCompathだ。参加者は20代~60代まで。年齢も職業も多種多様な人がここに集い、対話と共同作業を行うことで、自分や社会、自然の存在を捉え直していく。そんなCompathに関わる人々の声を聞き、この学び舎についてレポートする。
多様な文化を育んできた東川町だからこそ生まれたCompath
北海道のほぼ中央に位置する東川町は、移住者の集まるまちとして知られ、カフェやセレクトショップなど、独自のこだわりを感じさせる店舗も多い。近年では年間転入者数が600人台、この30年では約1,500人が増加。現在人口は約8,500人である(2024年4月時点)。 移住者が多い理由として、旭川空港に近いという利便性や大雪山の雪解け水であるおいしい地下水が生活用水となっているという特徴がある。しかし立地や自然環境だけでなく、多様な文化が育まれてきたことも、この街が人々を惹きつけてやまない理由といえる。
東川は1985年に「写真の町」宣言を行い、写真文化によるまちづくりに取り組んできた。中心街には写真作品が展示されている。
図書館やギャラリー、日本語学校などが集まる「せんとぴゅあ」には、椅子研究家・織田憲嗣さんが収集した椅子のコレクションも展示されている。
今回、取材したSchool for Life Compathは、デンマーク発祥のフォルケホイスコーレという教育機関をモデルにした大人の学び舎だ。週末のみから10週間の滞在まで、テーマに合わせたコースが組まれている。 フォルケホイスコーレとは、哲学者であり教育者でもあるデンマーク人のN・F・S・グルントヴィが「すべての人に教育を」というコンセプトのもと、学校に通うことのできなかった主に農家の人々に向けて、民主主義を根づかせるために開いた学校。1844年に1校目が設立され、現在、北欧に約400校がある。 17.5歳以上であれば誰でも通うことができるこの教育機関の特徴は2つ。寮に住み、多様な他者と暮らし対話を重ねることで、民主主義の意識を育てる場であること。試験や成績評価が一切なく、純粋な学び、探究ができる場であること。 人生を少し立ち止まって、作りたい社会を考える場として、個人の次なるステップを考える場として、高校を卒業したばかりの人から社会で長年経験を積んだ人まで、幅広い人々が通い、「人生の学校」とも呼ばれている。
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