古田新太「実は破天荒ではなく気遣いの人。それが自分の強み。個人主義は、仕事でも家族関係でも変わらない」
◆限られた人数の中で大戦争をする難しさ 今回、新感線の舞台で繰り広げられる物語は、美しさを武器に天下取りをもくろむ壮大なピカレスクロマン。島国「ヒノモト」に生まれた見目麗しい男・ヒュウガ(生田斗真)と幕府の密偵を務める謎多き男・カイリ(中村倫也)が出会い、流刑の身だった天子・ゴノミカド(古田新太)を担ぎ、幕府転覆を画策する。 今回の脚本を読んだ時、「これは大変だぞ」と思いました。前回の『天號星(てんごうせい)』では1対1の戦いが続いていくんだけど、今回の物語は戦争なんです。うちの劇団は少人数なので、限られた人数の中で大戦争をしなきゃいけない。アクションアンサンブルダンサーの連中は1人何役もやるから、アクションシーンでは、敵になって出てきて、やられて引っ込んで今度は味方になって出てくる、みたいなことになる。早く着替えて早く出なきゃいけないし、顔バレできないから被り物もしなきゃいけない。これは、舞台袖の交通整理が大変だぞ、と。 こうなると、怪我が怖いんですよ。踊れるやつも戦えるやつも限られていて、代わりがいないので。劇団の脚本を担当する(中島)かずきさん、演出を担当するいのうえさんも、舞台袖を全然見ていないから、劇団で一番古い人間としては、それが一番心配です。うちの劇団、昔みたいに小劇場でやっていた時とは規模が違うんだぞ!お前ら、わかってるのか!って。(笑) ただ、斗真と倫也が成長しているから、そこは頼りがいがあります。あいつらは10代の頃から見ていて、当時からクレバーな若造たちだなと思っていたんですけど、2人とも40歳前になって、今は全体をスムーズに進行させることまで考えられるようになった。前は、「がんばれ、がんばれ」ってケツを叩かないといけなかったけど、今は逆にやつらが周りに「行こうぜ」と言える人間になっている。そこはやっぱり信頼できるし、ありがたいなと思いますね。 『バサラオ』は国取りの話なので、スケール感はまったく違うんだけど、過去に出演した映画『空白』でいうところの寺島しのぶちゃんの役が、今回はいっぱい出てくる感じかな。自分の正義というか「私が正しい」という押し付けをしてくる人たち。うざったいでしょう? “良かれと思って”の人たちって、「誰にとって」良かれとなってほしいかといえば、結果自分のためなんですよね。相手のことを慮ってということじゃなくて、てめえが気持ちよくなるために我を通す。ただ、我を通して成し遂げたい目的が違う人たちばっかりなので、そこでぶつかり合うのが今回の物語です。