祭りの舞台、コミュニティーの中心…宗教施設も壊滅、長い再建への道 能登半島地震の被災調査から考えた、行政の支援のあり方とは
この8団体に何らかの被災をしたとする宗教法人数を尋ねた結果、計2020の法人が被災したと回答した。 石川県神社庁によると、1142の神社・法人が被災。本殿や拝殿だけでなく、鳥居や灯籠などの被害も目立つという。 県内の仏教系で最多の804法人がある真宗大谷派は59%が被災していた。高野山真言宗は県内の75法人全てが被害を受けたとした。 被災はさまざまで、境内の地割れや墓の倒壊、津波による浸水、液状化による沈下、土砂崩れもあった。調査対象ではない団体の宗教施設も県内にあり、被害はさらに膨らむとみられる。 ▽解体、再建・・・莫大な費用 宗教施設の復旧も、家屋同様に解体、そして再建という手順を踏むことになるが、問題になるのが、いずれも莫大な費用がかかる点だ。 このうち解体については、環境省や県が、一定の要件を満たす半壊以上の建物は、自治体が所有者に代わって解体する「公費解体」の対象になるとの見解を示している。環境省はマニュアルで「中小企業者並みの宗教法人が所有する建物は補助対象」と明記した。
新型コロナウイルス禍が明け、久しぶりに参拝客でにぎわう元日を迎えていた輪島市の重蔵神社も被災した。拝殿や社務所などが全壊、本殿も半壊した。禰宜の能門亜由子(のと・あゆこ)さん(48)は今回、被災した建物が公費解体の対象になると知り、ほっとしたという。 2007年の能登半島地震でも鳥居が倒壊し、3年前に再建を果たしたばかりだった。「大きな建物は、解体だけでも結構な費用がかかる。自分たちでは難しい」 問題は再建に向けた費用だ。行政が宗教施設に再建費用を助成するのは、憲法が定める「政教分離原則」に抵触するという指摘がある。過去の災害でも、自治体は直接の費用助成にちゅうちょしてきた。 能登半島の寺社も、07年の能登半島地震や昨年の地震では、氏子や門徒ら地域住民の寄付で再建資金を捻出した部分が大きい。 ところが、近年の地震の中で飛び抜けて被害が大きい今年の地震では、氏子や門徒ら地域住民の大半が被災した。