祭りの舞台、コミュニティーの中心…宗教施設も壊滅、長い再建への道 能登半島地震の被災調査から考えた、行政の支援のあり方とは
本住寺住職の大句さんは「自分の家もなくした人に『寄付してほしい』なんて言えない。地域で必要とされている寺だから、再建はしたいが…」と打ち明ける。 重蔵神社の能門さんも「まずは氏子さんたちの生活再建が1番。先は長い」と遠くを見つめた。 ▽後回しにした再建、寄付を呼びかけたのは3年半後だった 2016年の熊本地震で被災した浄福寺(浄土真宗本願寺派、熊本市東区)は、同じようなスタンスで再建を「後回し」にした先輩格だ。 本堂と鐘楼、山門が全壊した。住職の浄住護雄(きよずみ・もりお)さん(83)は自宅も被災した。「どうやって再建するのか、ぼうぜんとした。門徒さんの家も大半が被災していた。すぐに『寄付をお願いします』とは言えなかった」 地震保険金や見舞金などを除くと、再建には9千万円以上の寄付が必要だった。寄付のお願いを門徒に呼びかけたのは、地震から3年半ほど経過した時期。「門徒さんの自宅再建が進んだころ」だった。
門徒の被災状況もさまざまなので、アンケートで寺の再建に対する考えを尋ねた。寺の行事や便りで機会あるごとに進捗状況を説明した。寄付は目標金額を超え、地震から6年後の22年に全ての再建を果たした。浄住さんは「再建に向けた機運を盛り上げ、いかに門徒さんの協力を引き出すかが大事だ」と話す。 ▽〝政教分離原則〟に触れない形の支援とは 6月5日の石川県議会。馳浩知事が、能登半島地震でつくられる復興基金で、被災した神社仏閣の再建を支援する方針を表明した。 「基金」という形態がミソだ。過去の災害でも、同様に基金で宗教施設を支援した実績があった。2004年の新潟県中越地震などでは、政教分離原則との兼ね合いを慎重に考慮し、行政予算による直接助成ではなく、基金という形でワンクッション挟んだ。目的も「地域コミュニティーの再生支援」と題して、再建を復興基金で支援した。 能登半島地震の現場を何度も回り、災害と宗教に詳しい大阪大大学院の稲場圭信(いなば・けいしん)教授(共生学)は、政教分離原則がある中で、石川県が支援に乗り出した姿勢を評価する。「あれだけの被害を宗教施設が自力で再建するのは無理がある」