「長期避難のための食料備蓄」専門家が教える、いざという時の役に立つ“生き抜く力”
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「長期避難のための食料備蓄」。[監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中。]
長期避難のための食料備蓄。
食料の備蓄は一般的に最低3日~1週間分が目安とされており、缶詰やレトルト食品を蓄えている人は多いことだろう。では、より長期的な避難生活に備えるには、どうしたらいいだろうか。 大切なのは、心とカラダが安らぐ食事を考えることだ。防災食は、簡素で栄養が偏りがち。慣れ親しんだ味や見た目とはほど遠く、タンパク質やビタミン、食物繊維などが不足した食事が長く続くと、体調不良やメンタルの不調を引き起こす原因になってしまう。 とはいえ、すべてのものを完璧に備蓄する必要はない。現実的なプランは、支援物資がある程度届くことを前提に、それと組み合わせて少し豊かな食事ができるようにすることだ。栄養はサプリなどで補いつつ、食べ慣れた味の食料や調味料で工夫する。そうすることで、不安な避難生活の中でも、少しずつ日常を取り戻していくきっかけになってくれるはずだ。
防災食のプランを家族で話し合う。
被災時において、食事は唯一の楽しみであり、生きる希望となるもの。家族の好みやアレルギーなどを反映しながら、どんな食事ならストレスなく楽しめるかを話し合っておくことで、備蓄するべきものがより鮮明に見えてくる。高齢者や子どもがいる家庭では、特に重要だ。
なるべく食べ慣れたものを選ぼう。
食べ慣れない味というのは、思っているよりもストレスになるもの。また、いつも同じものばかりでも飽きてしまう。備蓄するものは、なるべく慣れ親しんだものを選ぶようにしよう。食材や調味料など、いつもの家庭の味が安心感をもたらしてくれる。
自分に合った備蓄方法を。
普段から食べている食品を多めに買い置きし、消費していくローリングストック。食品ロスなどの観点から広まっている備蓄方法だが、食品ごとにバラバラの期限をチェックする手間や、コスト高になってしまう可能性があるなどのデメリットも。一方、通常の備蓄であれば、1年に一度程度の確認で済み、長期間もつものであれば経済的。それぞれ長所と短所があるので、自分の性格や必要な物資に照らして、上手に管理できる方法で備蓄をしよう。 米:大人2人、子ども1人の3人家族で1か月10~12kgが目安。水を節約するために無洗米を。 レトルト:長持ちするレトルトは、なるべく普段食べているものを。調味料などを使ってアレンジも可能。 餅:一般的な切り餅は1~2年もち、しかもハイカロリー。醬油だけあれば食べ慣れた味になる。 調味料:塩・コショウ、味噌、醬油、砂糖、酒、みりんなど。家庭でいつも使っているものが理想的。 麺類:カップ麺はかさばるので、そばやパスタなどがデッドスペースが生まれず効率的。 日持ちする野菜:生鮮食品は貴重。玉ネギやジャガイモなど、長期間保存できる野菜があると幅が広がる。
調理道具も忘れずに。
首都直下地震などの大地震における東京都の被害想定(内閣府発表)では、ガスの復旧にかかる日数は最大55日。その間、調理などをするためにはガスコンロやガス缶(支援物資としても手に入りやすいCB缶がいい)の備えも忘れてはならない。
edit & text: Ryo Ishii(初出『Tarzan』No.880・2024年5月23日発売)