成長続く「博多阪急」の特徴は低い外商依存度…「ターミナル百貨店」強み発揮、売上高は福岡市で2番手に
百貨店のビジネスモデルが転換期を迎えている。主力の衣料品はカジュアル専門店などとの競争で逆風にさらされる一方、高級ブランドや宝飾品の販売が好調だ。ただ、富裕層は高齢化が進んでおり、各社は若年層の取り込みに力を注ぐ。都市部では訪日客による消費が盛り上がるが地方には恩恵が届かず、生き残りをかけた立て直しが急務となっている。(佐藤陽) 【グラフ】博多阪急の総額売上高と入店客数の推移
平日に行列
10月上旬、福岡市の博多駅ビル。核テナントの百貨店「博多阪急」の地下1階には、平日の午前中にもかかわらず訪日客らの長い行列ができていた。お目当ては福岡県産イチゴのあまおうを使った菓子専門店「アマンベリー」だ。阪急が取引先と開発したブランドで、「ここでしか買えない」と人気を集める。
昨年秋、総菜や酒などの店舗が並ぶ食料品フロアの菓子売り場を改装した際の目玉としてオープンし、売り場中央にあった仕切りをなくして買い回りもしやすくした。九州初出店の人気バター菓子専門店「サブリナ」も誘致し、総額売上高の5分の1を占める食料品の売り上げが1割ほどアップした。
博多阪急の藤井武フード販売部ディビジョンマネジャー(56)は、「博多阪急は地元の好みを把握し、大消費地の大阪にある阪急本店は大きなトレンドを知っている。両方の強みを生かした売り場づくりが奏功した」と力を込める。
関西では圧倒的トップ
鉄道駅が集積する大阪市・梅田で「ターミナル百貨店」として発展してきた阪急本店の総額売上高は関西で圧倒的なトップで、2023年度は過去最高の3140億円に達した。無名だった九州でも11年に開業した新博多駅ビル「JR博多シティ」に進出してから成長が続き、博多阪急も23年度は623億円と過去最高だった。福岡市内の主要4百貨店で岩田屋本店に次ぐ2番手につける。
特徴は裕福な得意客への訪問販売を主体とする「外商」への依存度の低さだ。一般的な百貨店では売上高に占める割合が数十%に達するが、博多阪急は数%と1桁少ない。代わりに鉄道を利用する観光客や家族連れ、通勤客らが買いやすい価格帯の品ぞろえや催事の充実で需要を取り込んできた。幹部は「福岡でもターミナルの良さを生かせている」と胸を張る。