「うちの社員はすごい!」 “仕方なく”家業を継いだ男性に起きた心境の変化 大阪府八尾市の木村石鹸
ふつうなら専門業者に頼むであろうことも、専門外だと投げ出さずに、ひとまず自分たちで作ったり考えたりする。だから、知識がぐんぐんと深まっていく。もちろん問題がないわけではないのですが、本当にすごいんです。 皆が「ここは自分の会社だ」と思って働いているんです。これはあたりまえのことのように思えますが、意外とそうではありません。 この意識は、個々人の能力やスキルが優秀であれば生まれるというわけではなく、親父が長年にわたって無条件に寄せてきた社員や会社への「信頼」や「期待」が生み出しているもののように思えたのです。
■ただただ社員を信じていた“親父” こういった「企業文化」を根づかせるには、経営理念とか社訓みたいなものも重要だとは思います。でも木村石鹸の場合は、経営理念や社訓そのものよりも、経営理念や社訓を本気で大事にしている親父の方を見ているように感じました。 そう、社員の多くは、親父を喜ばせたい、悲しませたくない、そんな想いが強かったんじゃないかと。 親父は何か高尚な戦略を立てるわけでもなく、リーダーシップを発揮するわけでもなく、ただただ社員を信じ、期待していました。
だから、いつも「うちの社員は、皆、すごいんやぞ」と言い続けていたし、何か経営的にマズそうなことが起きても、「うちの社員ならなんとかできる」と、何の根拠もないことを自信満々に言ったりしていました。本気で、無条件に社員を信じていたのです。 人は、誰かに本気で信頼され、期待されれば、それに応えよう、裏切らないようにしたいと思うものなのではないでしょうか。 信じて期待する。それだけのことです。その力の強さとか、本気度だけが、社員の誠実さや仕事への真摯さ、懸命さみたいなものを引き出していたのではないかと思います。そして、それが組織としての優秀さにつながっていく。
今から11年前。41歳になった僕は、起業から関わった会社が成長することの楽しさも苦しさも味わい尽くして木村石鹸に戻ってきました。 そして、その経験を生かしながら、木村石鹸に足りていなかった経営戦略や制度面などの整備をしました。時代に合わなくなった仕組みを見直し、改めた従来のやり方は多々あります。 ただ、社員を信じて期待するということだけは、変えてはいけないと心に刻んでいます。うわべだけでなく、本気で信じて期待する。これはやってみると、めちゃくちゃ難しいことです。