「うちの社員はすごい!」 “仕方なく”家業を継いだ男性に起きた心境の変化 大阪府八尾市の木村石鹸
2度の「事業承継の失敗」から、「もうこのまま放置しておけないな」と覚悟が決まりました。いや「覚悟が決まった」というより、「諦め」に近いでしょうか。「もう仕方ない」と、家業へ戻る決断をしました。 自分が紹介した人が、会社を混乱させてしまった責任もあります。絶対継がないと言い張っていたものの、大学卒業まで僕はずっと両親の世話になりっぱなしでした。それも木村石鹸という会社があったから、僕は何の不自由もなく、何の心配もなく過ごせていたわけです。
もう今いるITベンチャーのような気の置けない仲間との本当に楽しい時間はないのだろう。家業に戻ったら、仕事は仕事、プライベートはプライベート。しっかり線引きして、完全に「仕事」として割り切って取り組もう。信頼できる優秀なメンバーたちとの仕事はもうできないんだろう。そんなふうに諦めて家業に戻りました。 親父が繰り返して言う「うちの社員はすごいんやぞ」も、まったく信じていませんでした。今思えば、無知で恥知らずもいいところです。
■嫌いだった家業を誇りに思うように こうして僕は家業に戻り、親父の後を継いで、木村石鹸という老舗石鹸メーカーの代表に就任しました。 不思議なものです。あの嫌いで嫌いで仕方なかった家業が、今はものすごく楽しいし、典型的な地方の中小零細企業の姿に、誇らしさを感じたりしています。気づけば僕自身が、いつの間にか「木村石鹸の社員はすごい」と会う人会う人に吹聴しまくっているのです。 しかも、それだけでは飽き足らず、Xやnoteでもそんな話ばかりしているものですから、いよいよ親父の発言回数を超えてしまったかもしれません。
いや、本当にすごいんです。うちの社員は。 すごいやつなんているわけないやん、と鼻で笑っていた自分が恥ずかしいぐらいに、木村石鹸の社員は優秀だったんです。それは僕が家業に戻って得た実感です。 皆とにかくまじめです。言われたことはきちんとやるし、言われていないこともやっている。誰に指示されるわけでもなく、各自が段取りや準備をすませている。急遽トラブル対応で作業する手が足りなくなったら、営業も開発の人間も自分事として手伝いに駆けつける。