ロシアの制裁が生んだ奇跡 モルドバワインの逆襲
プーチンや英国王室も実はファン、世界の著名人も愛したモルドバワイン
■プーチンや英国王室も実はファン、世界の著名人も愛したモルドバワイン モルドバには、200万本ものワインが保管されている世界最大のワインセラー「ミレスチ・ミーチ」があり、次いで「クリコバ」は、全長約120キロメートルの地下貯蔵庫を有しています。これらのセラーには、ロシアのプーチン大統領やドイツのメルケル元首相のプライベートコレクションが収蔵されていることでも知られています。さらに、かつてはイギリス王室の食卓にもモルドバワインが並び、ヴィクトリア女王もシャトープルカリのワインを愛飲していたという逸話があります。ちなみに、創業1827年のシャトープルカリの「フリーダムブレンド」は、旧ソ連から独立したモルドバ、ウクライナ、ジョージアの3カ国のブドウをブレンドして作られた特別なワインで、現在はウクライナ支援の一環として、その売り上げの一部がウクライナの子どもたちのために使われています。 また、ロシアがウクライナ侵攻を開始した当初はウクライナからの避難民を一時的にワイナリーの敷地内に受け入れていました。シャトープルカリのワイン輸入をしている前述の岩崎氏もロシア駐在中に10カ国以上にあるワイナリーを200以上めぐり、最後にたどり着いたモルドバでワインに惚れ込み、インポート事業を決意したといいます。 ■日本での躍進に期待 近年、モルドバワインは日本市場でも注目を集めています。特に、「日本で飲める最高のワイン」コンクールにおいては、シャトープルカリのワインがフランスワインを抑えて赤ワインのフルボディ部門で優勝したことが話題となりました。Wine of Moldova Japan設立パーティーには日本の名だたる政治家も参加し、そのクオリティの高さに驚きの声が上がる場面もありました。参加したワイナリーの一部はまだ提携する日本のインポーターを探しているものも多く、インポーターにとっても発掘しがいのある国かもしれません。近年、ワインを観光の観光産業にも力を入れており、日本の旅行会社がモルドバのワインツアーを展開し始めているなど、今後ますます日本国内での知名度が上がることが期待されています。 一方、モルドバには親ロシアの分離派が支配する「トランスニストリア」地域があり、この地域への渡航は日本の外務省が2024年秋時点でも渡航中止勧告を継続しています。モルドバはウクライナ侵攻による経済的な打撃を受けているだけでなく、ロシアからの干渉にも苦しんでいるのが現状です。筆者もいつかモルドバのワイナリーを訪れることを目標に、世界に平和が訪れることを願っています。
吉田まゆ