“退社8分後に出勤”で考える過労社会の処方箋「インターバル休息」制度
勤務時間外のトラブルへの対応は?
KDDIは通信インフラに関わる企業だけに、通信トラブルが発生すれば、勤務時間外であっても直ちに復旧作業に当たらなければなりません。 「業務が回らなくなるのでは」「お客さまに迷惑がかかるのでは」。社員の健康を守るための制度にもかかわらず、インターバル休息の導入に対し、経営側からだけでなく社員たちからも慎重な意見が寄せられたそうです。 KDDI労働組合によると、導入してから半年以上たちますが、制度が足かせになって仕事が滞るような事態は起こっていないといいます。逆に社内で働き方に対する意識が変わりつつあるというのです。 春川事務局長は、「会社が労働時間ではなく、休息時間に注目するようになったことで、社員の健康確保という意識が高まりはじめました。深夜に通信トラブルが発生しても交代要員を手配したりして、職場のマネジメントにもいい影響が出てきています」と説明します。
長時間労働からの「意識改革」迫る
仕事と家庭の両立を意味する「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が広がりつつあります。「ワーク」に偏りすぎていた社会を「ライフ」のほうに比重を移す。「仕事ありき」から「休息ありき」への発想転換。インターバル休息は、長時間労働が染みついた私たちに意識改革を迫るものです。 社員の健康を害してまで仕事をさせることを是としていいのか――。その発想に立てば、「退社して8分後に出社」といった異常な働き方はありえません。国内の労働人口が減少していく中、長時間労働によって貴重な労働力を過労死や職場うつなどで失うことは、社会にとっても大きな損失です。 「残業が減れば、社員は家族のだんらんが増えて癒やしになり、健康維持にもつながる。仕事の効率化が図られ、生産性も上がる」。これは、かつて三菱重工業でインターバル休息の導入に尽力した労働組合幹部の言葉です。 誰もが健康で生き生きと働ける職場づくり。インターバル休息は、「過労社会」の処方箋として有効な選択肢だと私は考えます。 (東京新聞記者・中澤誠)