“退社8分後に出勤”で考える過労社会の処方箋「インターバル休息」制度
過労死や過労自殺を伝えるニュースが後を絶ちません。安倍政権が検討する「働き方改革」の中でも「長時間労働の抑制」が盛り込まれるなど、長時間労働の問題は喫緊の課題となっています。 「インターバル休息」という制度があります。日本ではまだ法的に整備されていませんが、欧州連合(EU)では既に導入されています。一方で、日本でも民間レベルでは少しずつ取り入れる企業が増えています。インターバル休息制度とは、どんな制度でどんな現状なのか。長時間労働の問題を取材している東京新聞の中澤誠氏に寄稿してもらいました。
退社から次の出勤までたった「8分」
退社してから8分後に再び出社――。過労自殺した西日本高速道路の男性社員(34)の過酷な勤務実態を1月25日、神戸新聞が報じました。神戸西労働基準監督署は、男性社員の労災を認定したそうです。 神戸新聞の報道によると、男性社員は兵庫県内の有料道路の補修を担当しており、2015年2月、神戸市内の社員寮で自殺しているのが見つかりました。 遺族が職場の出退勤記録やパソコンの使用時間から、亡くなる直前の4か月間の残業時間を算出してみると、いずれも月も100時間を超え、最長で178時間に上っていたそうです。厚生労働省が、過労死する恐れがあると警告する1か月の残業80時間の「過労死ライン」を大幅に上回るものです。 男性社員は夜間工事の監督業務にも従事していました。2014年11月には、午前7時に出勤し、昼と夕の休憩を挟んで翌5日午前4時59分まで勤務。その8分後の午前5時7分には再び出勤した記録が残っていました。
次の出社まで一定の「間隔」を確保
退社から出社までの間隔が8分という男性社員は異常なケースでしょうが、終電ギリギリまで働きながら翌朝にはいつも通り出勤しているサラリーマンは少なくないと思います。 本来、日本の法律では、1日8時間・週40時間を超える労働、つまり残業を認めていません。しかし、実際には当たり前のように残業が行われています。それは、経営者側と労働者側との間で合意さえすれば、1日8時間を超えて残業させることができるという例外ルールがあるからです。「36(さぶろく)協定」と呼ばれるものです。 例外であるはずの残業が常態化してしまっているのです。残業を織り込んだ働き方を当然のように受け入れ、違法なサービス残業でさえまかり通っているのが、日本の職場の実情です。 労働時間への規制が脆弱な日本に対し、EUの加盟国には強い規制が働いています。 「残業も含めて週48時間まで」という絶対的な労働時間の上限規制に加え、一日単位でも規制をかけています。退社してから次に出社するまで、11時間以上空けることを企業に義務付けるもので、「インターバル休息制度」または「勤務間インターバル制度」と呼ばれています。 睡眠などの休息時間を確保することで、疲労がたまるのを防ぐ狙いがあります。例えば、11時間のインターバル規制を導入した場合、午前1時まで働いていたとすれば、定時の出勤時間が午前9時であっても正午以降に出社を遅らせなければなりません。