“退社8分後に出勤”で考える過労社会の処方箋「インターバル休息」制度
日本では法的な制度化はされておらず
日本では、インターバル休息制度は法的に制度化されていません。 1日8時間の労働時間の規制を撤廃する「残業代ゼロ」制度を盛り込んだ労働基準法改正案が2015年4月、国会に提出されました。この改正案の策定に当たり、厚生労働省の審議会でもインターバル休息制度の導入が議論されました。この審議会の席で、労働者代表の委員が「労働者の健康確保を図るために実効性のある労働時間法制を整備すべきだ」として、すべての労働者を対象に導入を求めたのです。 経済活動を縛るような規制を嫌がり、経済界は反発。最終的には、すべての労働者を対象とすることは「時期尚早」として見送られ、残業代ゼロ制度の対象となる高収入の専門職に限って導入することになりました。ただし、この限定導入も、3つの過労防止策のうちどれか一つを選べばいいという選択式である上に、まだ最低何時間の休息を義務付けるかも決まっていません。法改正後、厚労省で審議されることになりますが、仮に短い時間に設定されれば、骨抜きの規制になりかねません。労働基準法の改正案自体、昨年の国会では審議されず、次回に持ち越しとなりました。 まだまだ国内の制度化にはハードルが高そうですが、「連合」など労働組合からは待望論が上がっており、自主的に導入する企業が増えています。
民間レベルでは導入する企業が増える
三菱重工業は2011年4月から導入。7時間は勤務の間隔を空けることを努力義務としています。 2015年7月から就業規則に盛り込んだ携帯大手KDDIのルールは、さらに踏み込んでいます。管理職を除く社員には、最低8時間空けることを義務付けました。全社員には、勤務の間隔が11時間に満たなかった日が一カ月で11日以上になれば、健康診断や産業医の面談を受けさせるルールも設けました。 ただし、EUのように11時間の休息を義務付けたとしても、一日最大5時間の残業は可能です。週休2日で連日5時間残業したとすれば、過労死ライン程度の長時間労働になってしまいます。 そのEUにも満たない規制では長時間労働防止に効果がないのでしょうか。私はそうは思いません。 注目したいのは、インターバル休息の考え方です。1日24時間のライフサイクルを考えたとき、まず休息時間を確保した上で、残りの時間で一日のスケジュールを決めていく。それは休息時間を生活の中心に据えた発想です。かつて米国などから「エコノミック・アニマル」と揶揄された日本の企業戦士たちからすれば、真逆の発想でしょう。 会社側に導入を働き掛けたKDDI労働組合の春川徹事務局長は、「これまでの長時間労働削減の取り組みでは、私たち自身も残業を前提とした発想から抜け切れていなかった」と明かします。