オフィスで長時間働くことは美徳なのか 労働者としての幸せはどこに?
ビジネスパーソンに働き方の多様性を認め、誰もが自分の環境に合わせたスタイルで活躍できるようにしようという“働き方の変革”は、国をあげて取り組んでいる重要な社会課題ですが、今年はその変革を肌で実感できた方は多くないのではないでしょうか。今後解決すべき課題と今年注目された解決策についてまとめます。 会社に壊されない生き方(2)会社員時代より幸せ「ダウンシフト」という選択
“働きすぎ”が労働者を破壊する
今年の秋、大手広告代理店の電通に勤務する若手女子社員が、残業時間が月105時間にのぼったと言われる長時間労働を苦に自殺し、また深夜に及ぶ長時間残業や残業時間の過少申告が社内で常態化していたとして電通本社に労働基準法違反容疑で家宅捜索が入るなど、大きなニュースになりました。しかし、この痛ましいニュースを見たビジネスパーソンの中には、「これは氷山の一角だ」と思った方も多いのではないでしょうか。 日本のビジネスパーソンにとって、夜遅くまで続く残業は珍しいものではありません。厚生労働省が公開した『平成28年版過労死等防止対策白書』によると、従業員の月間時間外労働時間(月の残業時間)が1年のうち1回でも80時間を超えた企業の割合は全体の4分の1に迫る22.7%。また、週の平均的な残業時間が20時間を超えるという労働者の割合も男性で11.6%、女性で5.1%となっています。こうした労働者の76.8%は、「残業を今よりも減らしたい」という意向を示しており、“働きすぎから逃れたい”と訴える労働者は日本に多く潜在しているのです。
こうした日本人の働き方の実態について、長時間労働と過労死の因果関係などを調査・研究している厚生労働省労働基準局の担当者に話を聞いたところ、「今後は業種別の労働実態についての調査研究や労災事案の個別分析などを中長期的に進めていき、実態を把握した上で企業を監督する部門などと連携した企業の指導や啓発活動、相談受付など対策を行っていきたい」と語っています。 日本の労働者は欧米と比較しても働きすぎていると言われており、それは独立行政法人労働政策研究・研修機構がまとめた国際労働比較でも明らかになっています。では、そもそもなぜ日本人は働きすぎるのでしょうか。その要因には様々なものが考えられます。物流業や小売・外食業、製造業、医療・介護などでは、職場が24時間稼働しなければならないなど物理的な理由もあり、慢性的な人材不足や労働者数の調整による企業のコスト最適化などが要因のひとつではないかと考えられます。