オフィスで長時間働くことは美徳なのか 労働者としての幸せはどこに?
一方、大多数のビジネスパーソンが勤務するオフィスではどうでしょうか。もちろん、高度に機密性の高い情報を扱う場合など、業種・職種によってはオフィスでの長時間労働は避けられないかもしれません。しかし、“仕事をすること=オフィスで机に向かうこと”という固定観念に囚われている企業などでは、仕事の成果や生産効率などとは関係なく「とりあえずオフィスにいれば頑張っていると評価される」「仕事が終わっていても、上司が帰るまで自分は帰らないのが礼儀」といった理由で、価値を生み出す仕事をしているか否かを問わず、オフィスで長時間労働をすることが“美徳”とされる文化も存在しているのではないでしょうか。 過度な長時間労働がもたらす継続的な負担は、心理的にも身体的にも労働者にダメージを与え続け、様々な疾患の要因になることは、以前から指摘されてきました。また、長時間労働から生まれる慢性的な睡眠不足は、労働者のモチベーションや業務の生産性にも大きな影響を与えるとも言われています。長時間労働が蔓延することは、経済の成長に不可欠である大事な労働力を壊すことに繋がるのです。
“オフィスで長時間働くことが美徳”という常識を打ち破れるか
では、こうした日本のワークスタイルを巡る課題を解決する方法はあるのでしょうか。最近では、テクノロジーによって働き方を変えようという動きが生まれていますが、企業と労働者の双方からその解決策を検証します。まず、企業の働き方改革でここ数年、国も政策のひとつとして推進しているのが、「テレワーク」と呼ばれるワークスタイルの導入です。 テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用して時間や場所にとらわれずに、ビジネスパーソンのライフスタイル、ワークスタイルに合わせて時間や場所を有効に活用し、働き方に柔軟性を持たせようという考え方。自宅で会社と連携して働く在宅ワークや、営業活動などで外出した際にパソコンやスマートフォンを使ってオフィスと連携して働くモバイルワークなどが具体的な方法として挙げられます。 では、このテレワークについて実際のところはどうでしょうか。通信大手のNTTコミュニケーションズが経営者・会社役員と会社従業員を対象に行った「経営者と従業員の働き方に関する意識調査」によると、回答者の43%は「興味がある」と回答しているものの、実際には73.6%が「導入しておらず、検討もしていない」のだと言います。その背景には、「社内の打ち合わせがしづらくなる」(31.1%)、「在宅勤務者とオフィス出勤者の会話が減る」(24.8%)といったコミュニケーションに関する不安が挙げられており、メールやチャットツールなどICTによるコミュニケーション環境の担保を実現したとしても、オフィスに部下や同僚がいないことを漠然と不安に感じるという人は多いようです。こうした意識をどのように変えることができるかは、今後の普及に向けた課題になりそうです。