稲盛和夫氏が明かした、部長や課長に選んではいけない人材の特徴とは
「そんなことを思ってはダメだ」ともう一人の自分に言わせる
それが「セルフモチベーション(自己動機づけ)」といわれるものです。 困難に遭遇したときに、自分自身を励まし、勇気づけるという作業が要るのです。つまり、自分の魂が伝える意志の力、今ある自分とは違う自分、そういうものの力を借りて自分をエンカレッジ(勇気づけ)し、モチベートするのです。そんなことを思ってはダメだということを、もう一人の自分に言わせるということです。 そのように、困難なとき、ともするとつい愚痴が出そうなとき、弱音が出そうなときに自分自身を励まし、勇気づけることができる人、決して愚痴をこぼさない人、困難であればあるほど未来に向かって明るく希望を燃やし、その希望に向かってどんな不利な条件の中でも努力を怠らない人、そういう人は必ず成功します。 つまり、この目標を達成しよう、自分の人生はこうありたいという願望を持ち続け、そうした勇気づけ、動機づけを続ければ、潜在意識が働いて素晴らしい結果を招くのです。 最近でも思いますが、社員と話をしたり、仕事の結果などを見ていますと、まさにその人の心の動きがそのまま結果につながっています。 みんな晴れ晴れと気持ちよく希望に燃えてやっているときは、仕事がうまくいきます。問題は困難に遭遇したときです。心に迷いが生じ、愚痴が出て、このまま努力してもうまくいかないのではないかという不安が芽生えたり、今まで努力してきたことに疑問を感じたりしますと、その心の動きがそのまま、その人の仕事における結果につながっているように思います。 つまり、結果は他に求めるものではなく、自らの心に求めるべきだと思っています。
言い訳をする、逃げ回る、責任転嫁をするような人を要職につけてはならない
経営をやっていますと、いろんな困難に遭遇します。困難に遭遇すると、どうしても怯みます。困難を真正面から受けて解決していくには、たいへんな努力が要りそうだと思うばかりに、つい怯むのです。 そして、真正面からそれを受けて立ち、取り組んでいくというのではなく、他に何かもっといい方法はないか、と考えがちです。これが勇気にもとることなのです。 学問があり、インテリであればあるほど、真正面から困難を受けとめるということをせず、もっといい方法はないかと思うものです。それは勇気に欠けるところがあるからです。勇気がないから、何かうまく処理する方法はないかと考えるのです。しかし、そこで後ろを見せた瞬間に、解決するものも解決しなくなってしまうのです。 またもう一つは、困難に遭遇したときにこそ団結し、その困難を打ち破ろうと思っていた社員の人たちまでが、リーダーが怯んだのを見た瞬間に、逃げの手を打とうとします。 つまり、リーダーに勇気にもとることがあったときには、部下は皆それに倣って、困難を解決するどころか、困難を回避しようとする。その結果、それまで順調にいっていた仕事までがうまくいかなくなります。そういうリーダーでは、部下が尊敬しなくなるのです。 これは何もトップだけの問題ではありません。部長を選ぶにしても課長を選ぶにしても、卑怯な振る舞いのある人、つまり言い訳をしたり、逃げ回ったり、責任転嫁をするような人を要職につけてはならないのです。それは組織が腐敗するもとになります。 しかし、困難に遭遇したり不幸なことに見舞われたり、そういう苦しい状況に追い込まれたとき、勇気凜々となるような人はなかなかおりません。経営者でもそういう人はおりません。困難に遭遇すれば、みんなうろたえるわけです。 うろたえても、少なくとも部下の手前、うろたえてはならんと自分に言い聞かせて、そこから一歩も退かないことです。本人も逃げたい、怖い。しかし、責任上、そこから一歩も退かんという、噓でもいいからそういう勇気が要るのです。勇気を持つ、というのはたいへん大事なことです。
稲盛和夫(故人・京セラ創業者)