両陛下イギリス訪問へ 3代の天皇と英王室の深い交流【皇室a Moment】
平成の天皇だった上皇さまが「国賓」として訪問されたのは1998(平成10)年です。バッキンガム宮殿まで馬車でパレードされるなど、驚くほど華やかで、盛大な歓迎でした。 ――本当に多くの近衛兵と立派な馬車でパレードされて、沿道の方々も手を振って見ていますよね。 はい。昭和天皇の時もそうでしたが、近衛兵が先導する馬車列が組まれ、上皇さまの乗られる馬車にはエリザベス女王が、上皇后さまの馬車には夫のフィリップ殿下が乗っています。 一方で、戦後50年以上が経っていても、戦争のわだかまりはまだ残っていました。馬車パレードは華やかに進みましたが、沿道では日本軍の捕虜になった人たちが背を向けて並び、抗議の気持ちを表していました。 上皇さまは歓迎の晩餐会のスピーチで次のように話されています。
上皇さま:「両国の関係が,第二次世界大戦によって損なわれたことは誠に悲しむべきことでありました。この戦いにより,様々な形で苦難を経験した大勢の人々のあったことは,私どもにとっても忘れられない記憶となって,今日に至っております。戦争により人々の受けた傷を思う時,深い心の痛みを覚えますが,この度の訪問に当たっても,私どもはこうしたことを心にとどめ,滞在の日々を過ごしたいと思っています」 戦争の傷あとは両国に長く残ったわけですね。
日英の関係は、1600年、イギリス人ウィリアム・アダムス、のちの三浦按針が船で漂着し、徳川家康が江戸に招いて外交・貿易の顧問としたことに始まります。 1613年には国王ジェームス1世の親書が届き、日英の貿易が始まります。そして日本は鎖国の時代へと入り、関係は中断してしまいます。 江戸時代末期の1858年、「日英修好通商条約」が結ばれ、外交関係がスタートします。 明治維新の翌年の1869年にはヴィクトリア女王の二男アルフレッド王子が来日し、明治天皇は「国賓」のように迎えました。日本が外国の王室メンバーを迎えた最初です。 1902(明治35)年、日英同盟が結ばれ、日本は「第1次世界大戦」に参戦しますが、1937(昭和12)年からの日中戦争で関係は冷え込み、さらに1941(昭和16)年に太平洋戦争が始まると、日本とイギリスはアジアの各地で戦火を交え、多くの兵士が犠牲となり、捕虜となりました。 1952(昭和27)年、サンフランシスコ条約が発効し、日本は国際社会に復帰し、再び良好な関係を築いてきました。 ――こうしてみると、交流の盛んな時期もあれば途絶えた時期もあって、関係のいい時代、悪い時代がありながらも、節目節目で深い交流をしてきたんだなと感じました。