「よい教育が、押しつけられてできるのか」…自由でのびのびした小学校は、外部通報を機に管理教育へ舵を切った 学習指導要領に少しでも沿わない独自授業は「不適切」なのか
「よい教育」とは、何で決まるのだろう。奈良市の国立奈良教育大付属小は、児童の個性を尊重する「自由でのびのび」した校風で知られてきた。その学校が、外部からの指摘を機に、管理教育にかじを切ろうとしている。 付属小の男子児童がいじめで転校 奈良教育大「組織対応に遅れ」
きっかけは昨年5月、外部から奈良県教育委員会への指摘だった。「教科書が使われていないのでは」。小学校を設置する大学が調べると、「君が代」を一部の学年にしか教えないなど、国の指針や法令に反する指導があったことが判明。大学は「不適切な点があった」と謝罪し、改善策のとして、複数の教員に他校への出向を命じ、学習指導要領の遵守とチェック態勢の強化を打ち出した。 だが、学校の対応に保護者は安心するよりも疑問を深めた。「児童へのしわ寄せが不安」「国指針に触れたらアウトなのか」。子どもも保護者も教員も不安を抱き、混乱が続いている。(共同通信=大森瑚子) ▽不適切 今年1月、大学側は奈良市内で記者会見を開いた。昨年5月の外部通報を受けた調査の結果を発表。主に以下のような不備があったという。 ・君が代を6年生のみに指導 ・図画工作などで教科書が使われなかった ・書写を毛筆ではなく筆ペンで実施
文部科学省が定める学習指導要領に沿っていなかったとし「不適切だった」と謝罪した。 共同通信を含む各メディアは、この「不適切」というワードを報じた。 「私って不適切な教育を受けているの?」。自由な教育方針に共感し、娘を通わせているという40代の母親は、娘からこう問われ、戸惑ったという。 母親は取材に「大学側も調査前から認識し、許容してきた学習内容だったのでは。現場の先生たちを切り捨てたように感じてしまう」と話した。付属小で何が起きているのか、改めて取材を始めた。 ▽自由でのびのび 教育大が設置する付属小は、小学校教育の研究が盛んで、児童の個性を尊重する校風だ。入試はなく、抽せん方式を採用。特別支援学級も設置されている。 授業も詰め込み型ではなく、「なぜそうなるのか」という問いを大切に、児童自らが考える力を育む教育を実践してきた。毎年秋には、全国の教育関係者が実践的な教育を学ぶ場として、公開研究会も開かれている。