「よい教育が、押しつけられてできるのか」…自由でのびのびした小学校は、外部通報を機に管理教育へ舵を切った 学習指導要領に少しでも沿わない独自授業は「不適切」なのか
そもそも、学習指導要領は、必ず従わなければならない絶対的なものなのか。文科省によると、全国どこでも一定の教育を受けられるよう、それぞれの学校で教育課程を練るために基準を定めたものとしている。 1947年に刊行されて以降、全国の教員らでつくる組合は度々、指導要領への反対運動を続けてきた。 法的な拘束力の有無を争う裁判も各地で開かれたが、1976年に最高裁で拘束力が認められた。 名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は、判決が出た当時に比べ、指導要領の内容や量は大きく変化していると指摘する。 「議論の余地が大きいのに、指導要領をうのみにするのは思考停止に近い。大学側は外部からの指摘を受けても、毅然とした対応を取る選択肢もあったのでは。 出向人事は、全国の教育現場を萎縮させかねない。児童のためにも、元の体制で問題点を話し合うのが望ましかった」 ▽よい教育 教員はどう考えているのか。10年以上にわたり付属小に勤める30代の男性教員が取材に応じてくれた。常に「よい教育」とは何なのかを問いながら、児童と向き合ってきたという。
「校長の権限を抑圧していたとする大学側の指摘は、教員の暴走を印象づけている。私たち教員は、子どもが自ら考える力を伸ばせるよう創意工夫を重ねてきただけ」 教科書を使わず、教員が作ったプリントを使って進められた授業もあった。しかし、こうした指導は学校教育法に反しており「不適切」と判断された。 「付属小の教育に不安を感じていた児童もいたかもしれない。検証は必要だと思う。それでも、大学側の調査は一方的で性急だった。真の『よい教育』は、上からの押しつけではなく、学校、児童、保護者全ての願いで完成されるものだと信じています」