【全文】BBC日本語版開設(中)「ソーシャルがニュースの編成に影響力」
視聴者の要求を満たすのは重要だが慎重さ必要(イーガン)
加藤:ジムに。ではまた、ニューヨーク・タイムズの例が出ましたけれども、似たような立場のBBCが、今話が出ているような、要するに数字目当てですよね、数字目当てのコンテンツづくりとか、数字目当てのタイトルづくりとか、編集の人間とビジネスとしての観点とちょっと違うかなと思うんですけれども。で、このあとこの話からこのビジネスサイドの話に移ろうと思ってるんですが、BBCにそういう風潮みたいなのがありますか。あったとして、どうしますか。 イーガン:そのような考え、つまりオーディエンスの開発は、ジャーナリズムの重要な要素の1つであります。つまりは消費者、視聴者の要求を満たすためには重要です。しかし、慎重でなければなりません。ここでは単に、ここで視聴者が求めているニュースだけを配信しようということまでいくと、これは極端になると思います。つまりメディアがどんどん分断されていきますと、非常に真剣なジャーナリストとしては、その責任を全うできなくなるわけです。やはりキュレーティング、編成の作業というのが求められるわけです。伝統的なジャーナリストとしては最も重要なニュースを配信していかなければなりません。 例えばショッキングビデオ、あるいはかわいいネコの写真というのは多く配信されているわけです。ただこれが、真剣なジャーナリズムの役割というのは、やはりわれわれは考え直さなければならないと思います。つまり世界で起きていることを十分に理解できる形で一般の方々にニュースとしてお届けすることです。ショッキングなニュースではないわけです。自分の生活にとって本当の意味にあるニュースを配信することです。その何が重要であって、何がたんなるはやりであるのか。それが判断できなければジャーナリストとしての生命は絶たれてしまいます。ジャーナリストとしては非常にコストの掛かるビジネスをやっているわけですから、やはり伝統的な価値観に基づいたきちっとしたスキルを持って、専門性を持ってジャーナリズムというものを追求していかなければならないと考えます。