【全文】BBC日本語版開設(中)「ソーシャルがニュースの編成に影響力」
日本には目指すべきロールモデルがないという不幸(津田)
津田:だから誘惑に、今、だから伝統メディアもちょっと負けてますよね。要するに朝日新聞とかみたいな伝統メディアが、いわゆるネットのまとめサイトみたいな釣りタイトルっぽい、釣りタイトルとは言わないんだけど、ちょっと釣りっぽいタイトルをしてアクセスを稼ごうみたいなことを、中途半端にやっちゃってるんだよね。あれがなんかちょっと、僕もいいものかどうなのかってのは考えちゃいますけどね。 藤村:そこは、津田さんが言われてた上からのアジェンダセッティングではなくて、言ってみれば読者と作り手の目線が同じ高さでコンテンツを作っていく、メディアを届けていく、あるいはそれを受け止めていくっていうときに起きがちなことだと思うんですよね。読者をすごく見える距離でメディアを運営していくっていう手法が、われわれのなかですごくリアルになった瞬間だと思うんですね。ですから、今日はちょっと個人的にご紹介したんですけど、ニューヨーク・タイムズが自分たちのコンテンツをよりバイラルに届けるために再加工するような編集チームをつくった。でもこれは今までトラディショナルメディアが、こういうアジェンダだよっていうふうにコンテンツを作ってきたのを、逆に消費者、オーディエンスの視点から見たときに何が食い付いてもらえるんだろうか、みたいな。 津田:だからデジタル時代の整理部みたいな感じでしょうね、そのニューヨークでね。 藤村:そうそう。そこはもう、例えば伝統のある媒体が逆にBuzzFeedの手法を学ぶとか、あるいは過去、例えば編成や整理の人はこういうタイトルでなければいけないと決めつけていたのを、もうA/Bテストが決めますとか。それはある部分は誘惑であり、ある部分、落とし穴であるんだけど、ある面では読者に1歩も2歩も近づいていくアプローチだと思っているので、一概にいい、悪いを言いにくいところにみんなが立ってるような気がします。 津田:なんか僕は、今の藤村さんの話、9割同意して、1割、なんか疑問というか、これ不幸だなと思ったのが、ニューヨーク・タイムズに関して言うと、BuzzFeedってね、BuzzFeedはいろんな評価はあるけれども、やっぱり取材記事とかクオリティーの高いパブ記事があったりとか、ネイティブ広告があったりみたいな、そこでやっぱりまねをするのに値するだけの価値があるようなものがあると思うんですね。ロールモデルとしてのBuzzFeedがあるのが、それは実はニューヨーク・タイムズにとってはうらやましいんだけど、日本でそういう意味でのロールモデルがないですよね。ネットでバズ、要するにまとめサイトの、じゃあまねをしていいのかっていうと、やっぱりそれはたぶんすごく水が低きに流れるようなところがあって、日本の場合そこで、だから独立して、すごく新しい価値とともに目指して、この手法はまねしたほうがいいよねっていう、目指すロールモデルっていうのが、やっぱあんまないことの不幸みたいなものをちょっと感じちゃったりもしましたね、なんか。 加藤:そういうロールモデル的な役割をLINE NEWSであるとかSmartNewsであるとかっていうお考えは。 田端:LINE NEWSとかポータルサイトのトップのトピックスとかは、まだ人間が編集してるんで、人間が1個のものを編集してるんで、当たり前ですけどある程度そういう配慮なり、現実的にそれはやると思います。もっとすごいというか、ワンステップ進むかなと思ってるのは、完全にワン・トゥー・ワンでパーソナライズされて、アルゴリズムが判断してる場合は、もうそんなの関係なくて、回転ずしふうに言うと、田端さん、前回来たときイクラばっかり3個食べたんで、ずっとなぜかイクラばっかり出てくるみたいな。いいかげん、栄養のバランス悪いでしょうと思うんだけど、みたいな。いや、でもあなたはイクラかトロかしか食べないですよね、と。それでいいのかって言うと、さすがにおなかいっぱいすぎて、もうちょっとなんかないんですか、みたいなことなんだけど。かといってよっぽどそこに信頼関係がないと、食べたことないネタ出されておいしいと思いますよって言われても、あ、じゃあちょっと食べようかなっていう気にはならないみたいなところが今の状況かなと思ってますね。