【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その3
歴史が薫る長浜の新しくて旧い街並み。縮緬工場の糸巻きをワインホルダーに…
長浜を訪ねるのは初めてだった。前職では数えきれないほど琵琶湖に出かけたし、堅田ではイベントも開催した。その延長で長浜でのイベント開催を打診されたこともあったけれど、いろいろな事情で叶うことはなく、短時間の滞在さえ記憶にない。もちろん、地名としての長浜は知っていたが、それ以上の興味も湧かなかったのである。
約1時間のドライブで北陸道を降りると、夕方近くの時間帯ということもあってか、なかなかの渋滞だった。目的地へは3㎞近くありそうなので、この調子だと近江八幡の街歩きはますます遠のいていく。助手席の言い出しっぺにブツブツと文句を言いながらのドライブ…しかし、その後、心から感謝することになるのだから旅は一寸先は闇、いや光明だ。
黒壁スクエアが古い街並みを活かした、ガラス文化をテーマにした観光エリアであることは、スマホの検索で理解していた。しかし、地方で目にする取ってつけたような舞台セット然の観光スポットだろうと期待薄…いや、むしろ微かな嫌悪感さえ抱いて、ステアリングを握っていたのである。
その一角に入ると道幅が狭くなり、お目当ての駐車場にもなかなかたどり着かない。ますます、イライラが募る。平日だというのに道往く人は多く、ほとんどが観光客のようだ。ようやくクルマから降りて、観光マップを眺めながら歩き始めると、やはり、小ぎれいに整備されたテーマパークの匂いがする街並みに迎えられた。
そこは、真新しいおしゃれな店舗と歴史を感じさせる建物がモザイクのように入り組んでいて、女性雑誌の旅行記事にでも出てきそうな雰囲気をそこかしこで感じる。しかし、しばらく歩くと、いつの間にか穏やかな心持ちになっている自分に気づき、戸惑った。
この手の街によくある、ポップなクレープ店と古い酒屋がまったく馴染まずに隣り合っているような不自然さがないのである。アジア雑貨店が妙な音楽を流しながら、老舗温泉旅館の向かいに陣取っている…というような珍妙さもない。たしかにモザイクなのだが、異物感が希薄で、しっくりと溶け合っているというか、支え合っている一体感を醸し出しているのである。