やり投げ・北口榛花インタビュー チェコでの単身修業からパリ五輪へ、自然体の決意
柔らかさの奥に秘めた闘志
「自然体」を貫くように見える北口だが、実はその心の奥底には大きな闘志を秘めている。高校3年時のインターハイ。前年王者として、さらに直前の世界ユースで優勝した世界王者として臨んだ大会で、北口は高校記録の更新を狙っ た。結果的には優勝し2連覇を成し遂げたが、高校記録を更新できず、目には涙を浮かべた。当時の北口の指導者ですら、「他の選手に失礼だ……」と漏らしたほどだが、普段の笑顔や柔らかい言葉づかいの裏に確固たる決意があるのを感じた。 「この先も頑張ればあと2回ぐらいはオリンピックには出られそうですけど、年齢的にメダルを目指せるオリンピックというのはあまりないと思うので、それなりに意識して臨みます。(チェコのバルボラ・)シュポタコバ選手が72メートルを投げた年が28歳(※筆者注:現在の女子やり投げ世界記録、実際には27歳)なので、そこには自分もある程度近づきたいなという気持ちもあるので、その辺を少し意識しながら、でも自分のペースは乱さないようにやろうと思っています」 北口は高校時代から、“ふんわり”した言葉の中に明確な目標を掲げ続け、それを一つ一つ実現するための努力を重ねてきた。涙のインターハイの後には日本ジュニア選手権で目標としていた高校新記録を打ち立てた。リオを目指した失敗の後には東京でオリンピック出場を実現し、決勝に進出した。去年9月には67メートル38という前人未到の日本記録も打ち立てた。 女子やり投げの世界王者として、パリ・オリンピックに自然体で臨む北口の言葉には、着実な歩みと努力を重ねてきたからこその自信が込められている。
ジャーナリスト 曽我太一