1歳から受験準備?インターナショナルスクール開校ラッシュ 年間授業料200万円超でもわが子を入れたい理由
■教室に「一体感がない」理由 「数学の問題でも自分一人で悩むのではなく、『この問題では何を問われているのか』『どの知識を使えば解けるのか』などとディスカッションしながら取り組みます。またチームの中には、数学が得意な子もいれば、問題文を理解するための英語力が優れた子もいるので、お互いの強みと弱みを把握することも大切。社会に出たら大半の仕事はチームで取り組むので、そのためのスキルは小さなときから身につけたほうがいいと考えています」(チンさん) 授業を見ていて、日本の学校との違いが顕著だったのが、良い意味での「教室内の一体感のなさ」だ。多くの子どもたちが車座になって先生の問いかけに答えるなか、数人の児童が隅っこに固まって机に向かい、別の先生にアドバイスをもらいながらプリント学習に取り組むといった様子もちらほら見られた。 チンさんによると、これは子どもたちの個性を尊重しているからこその姿だという。 「一人ひとり学力は違いますし、映像で学ぶのが向いていたり、ワークシートをこなすのが得意だったりと、適した学習方法も違います。その子にとって最適な方法で学びを深められるよう、先生はさまざまな教材を用意して授業に臨みます」 きめ細かな教育だけあって、学費は当然高額だ。2021年度の文部科学省の調査によると、私立小学校の学費の平均額は年間約167万円だが、同校は施設設備維持費や給食費などを除いた授業料だけで約230万円となっている。 それでもグローバル教育のニーズの高まりや、IB修了生専用の入学制度を設ける大学の増加といった追い風を受け、人気は右肩上がりだ。同校の全校生徒は、15-16年度は370人だったが、24-25年度は約800人まで増えている。
■入学面接で、英語力より重視されるものは… 日本人家庭からインター校を目指す場合、一番の不安材料は英語力だろう。同校では入学前に親子面接を実施し、スムーズなコミュニケーションをとることが難しいと判断した場合は入学を断るケースもある。しかし、入学課の橋本ベリンダさんによると、面接において英語力よりも重視するポイントがあるという。 「入学後は毎日英語に触れますし、英語が苦手なお子様向けのサポートプログラムも用意しているので、大きな心配はいりません。一番大事なのは、保護者がグローバルな視野を持ち、アオバの教育理念に賛同し、家庭でもお子さんの学びをサポートできるかどうかということです。授業の内容については、毎週情報を共有していますので、日本語でもいいので、家族でそのトピックについてディスカッションを続けられると望ましいです」 同校は多様な国籍や宗教の子どもを受け入れており、個性を伸ばす自由な校風を「アオバらしさ」と自負している。一方、同じインター校でも国内外の名門大学への進学実績を売りにしている学校もあり、日本人家庭から受験する場合に高いハードルが立ちはだかるケースは少なくない。 インター校の受験生と在校生を対象に、2歳から高校3年生までを受け入れる学習塾「EGCIS」の塾長・斎藤幸さんは、「日本人のお子さんが受験する場合、外国籍のお子さんよりも高い学力が求められることが多い」と話す。 「日本人家庭からでも入りやすい学校は増えてきていますが、インター校は本来、外交官や海外から来たビジネスパーソンのお子さんが対象なので、日本人はどうしても後回しになります。5歳児受験の場合、『Why』で始まる質問に対してきちんと理由を説明できたり、英語で書かれた算数の文章問題を解くことができたりと、受験時点ですでに英語圏の小学1年生レベルの英語力や学力がないと厳しいでしょう」