関東大震災や戦前の銀座を「カラー映像」化 NHKが東京の100年を振り返る番組
100人以上に取材し「色」の時代考証
今回のプロジェクトは2年ほど前にスタートし、実際のカラー化作業には約1年を要した。白黒映像をまずハイビジョンに変換し、時代考証に基づいて細部を復元していった。カラー化にあたり立ちはだかったのは、「当時の色」がどんな色だったのか特定することだった。 プロジェクトの岩田真治ディレクターは「色の要素の明度は白黒でも変わらない。グレーの中にも『色』がある。ただ勝手に色をつけたと言われるのはいやだった」と振り返る。そのために、橋、馬、乗り物、服など、さまざまな分野の100人以上の専門家に取材した。 例えば、着物や洋服の色は、主にNHKの時代考証の先生に当時の風俗の資料を基に確認し、軍服などはボタンの色や材質まで調べた。大震災の炎の色は、火災学の先生に見てもらった。「最初は赤すぎた」ようで、先生から「そんな色はない、実際の火災を見て」と助言を受けたという。また東京駅の場合は昔の絵葉書などを参考にした。 こうした歴史的な検証と色の要素など物理学的な考察をつき合わせて再現していった。岩田さんは「絶対に真実の色とはいえないかもしれないが、かなり再現できたと思う」と胸を張る。ただ、正確性を期すために、調べた結果、分からなかった場合は色をつけてない部分もあるという。
仏会社と最新技術で映像をカラー化
そして、特定した色を白黒映像に着色していった。その作業はフランスのCC&C社と協力して主に現地で行われた。同社は2つの世界大戦をカラー映像化した実績を持ち、デジタル技術を駆使した色彩復元に定評がある会社だ。 着色作業はコンピューター上で一つ一つ手作業で行われた。例えば、人の顔や着物、電車など、画面上で色をつける範囲を対象の形に沿って指定し、色を載せていく。この作業を繰り返し、少しずつ精密にしていく。動きがあるものは、カットごとに範囲を選んで着色する。一度色を決めてしまえば、そのデータで動きを追いかけることができる。これらは「アニメーションの作業に近い」という。デジタル技術の進歩でこうした細かい部分や激しい動きへの着色も可能になった。