どんな時に押せばいい? 押したらいったいどうなる? 駅のホーム設置の非常停止ボタン
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忘年会や新年会など、お酒を飲む機会が増える年末年始になると、よく見かけるのが駅のホームで千鳥足になっている酔客です。フラフラ、フラフラと歩くこの人がもし線路に転落してしまった時に、駅係員らにそのことを伝える手段として、多くの駅に非常停止ボタンが設置されています。しかし、実際にどのような場合に押せばよいのか、よくわからない人もいるのではないでしょうか。ボタンの機能や押すべきタイミングなどについて、鉄道各社に聞いてみました。
JR西日本の研修施設で体験
ボタンを押せば、何がどうなるのか。確かめるべく、大阪市吹田市にある西日本旅客鉄道(JR西日本)の社員研修センターを訪れました。 屋外にある研修用のプラットホーム上の支柱に、「非常ボタン」と記された黄色いケースが設置されています。このホームには1つだけしかありませんが、実際の駅では20メートルごとに1つ、列車1両につき1つの割合で配置しているそうです。 ボタンの上に右手の人差し指を置き、軽く押してみましたが、びくともしません。指先に力を加えながら押し込むと、ようやくボタンが沈んでカチンという手応えが伝わるとともに、ピポピポピポピポと警報音が鳴り響き始めました。甲高い音で、緊張感が伝わってきます。
同時に、ボタンの上にある黄色い表示灯と、ホームの外に設置された赤い色の非常報知灯が作動し始めました。表示灯は、現場に向かう駅係員にボタンが押された場所をいち早く知らせる役割を担います。駅係員が到着したら、ボタンを押した人が危険の発生した場所を知らせる、という流れになります。 非常報知灯は、駅に近づいてくる列車の運転士に緊急事態の発生を知らせます。これを見た運転士は、急ブレーキを掛けて列車を急停止させます。
ホームから人が転落した時などに
このボタンは、駅係員だけでなく、乗客が押しても大丈夫です。ボタンを押すべきケースとしては、▽ホームから乗客が転落した時▽線路内に人が立ち入った時▽列車に接触しそうな乗客がホームにいた時――などが挙げられます。 JR西日本によると、ホームから転落する人の半分近くは酒を飲んでいた人だといいます。例年暑さでビールの消費が増える6~8月と、忘年会・新年会シーズンの12~1月は、特に酔客が多い傾向にあるそうです。同社では女優ののんさんを起用したキャンペーンなどを展開。酒を飲んだ時にはホームからの転落に気をつけるよう呼びかけているほか、線路に転落するなど危険な状態にある人を見かけた場合はボタンを押すよう訴えています。