日本人の“鉄道信仰”は、地域を活性化できるのか
地方の衰退、地域の衰退がいわれるようになって久しい。とくに、地方の、鉄道が廃線になってしまったようなところでは、人口減少が進み、高齢化も進んでいる。とくに、国鉄末期からJR初期にかけて利用客の少ない赤字路線を廃線にし続けてきた北海道では、札幌への人口の一極集中が進んでいる。さらに昨年、「JR北海道再生のための提言書」がJR北海道再生推進会議により提出され、その中で運行本数も少なく、乗客も少ない路線の廃止が課題となっていた。実際に、地元住民は自動車を利用することが多く、鉄道は長距離の移動のために使うことが多い。しかし、鉄道の廃止は、なおいっそう過疎化を推進させる。鉄道は地域を活性化できるのだろうか?
日本人は鉄道を「信仰」している
昨年、チョー・イクマン著『鉄道への夢が日本人を作った』(朝日選書)という本が刊行された。この本の中では、近代日本人が鉄道敷設への夢を抱くこと自体が近代日本と日本人をつくったと主張している。「『鉄道への夢』は、この国が『近代の夢』を見ることと、『日本というネイション』成立への夢そのものと同義である」「外からこの国を見れば、なにもレールを敷かなくとも、日本の鉄道という甘美な夢は永遠につづき、覚めないかに思われる」という。 この国を近代国家にしたのは鉄道であり、それゆえに日本人は鉄道に愛着を持ち、ときには「信仰」の対象とする。 鉄道を舞台とした物語を、多くの人は好んでいる。西村京太郎のトラベルミステリーは再刊を繰り返し、初期の名作『寝台特急(ブルー・トレイン)殺人事件』はブルー・トレインがなくなったいまでも読まれ続けている。書店に行くと鉄道関連の本や雑誌は多く売られており、人々の鉄道への関心はますます高まっている。ニュースサイトでも、鉄道関係の記事はよく読まれている。 ふだんは鉄道を使わなくても、鉄道がないと困る、というのはあるのではないか。この国の人々を「統合」するための存在として、鉄道はある。それゆえに、路線の廃止や列車の廃止は批判され、新幹線開業に伴う第三セクター化にも疑問の声がある。レールで統合された国のあり方が、望ましいと考えている人たちもいる。