「エンゼルスと97億円の大型契約」菊池雄星が自ら作った野球施設「King of the Hill」で伝えたいこと「悩んでいる選手に使ってほしい」
3次元の動きが追跡されるウェイト練習
「King of the Hill (K.O.H.)」のこけら落としの翌朝、菊池はトレーニングウェアに身を包み、ウェイトトレーニングを行っていた。 西武時代から菊池を指導する清水忍トレーナー、メジャーでも菊池をサポートする伊藤健治トレーナーと言葉を交わしながら、130キロのデッドリフトを5回ずつレストを挟んで繰り返す。 この日、菊池は下半身中心のメニューを行なっていた。今季は「力の立ち上がり速度」、つまり動き始めてすぐにマックスの力を出せるかをテーマにしており、『Enode』という機器で速度を計測しながら行なっていた。 清水トレーナー、伊藤トレーナーと短いやりとりをしながら、菊池は目標にする数値に向けた動きをする。 「速く上げろ、速く上げろと闇雲に繰り返した場合と、毎回、数値をフィードバックしてそれを超えろと言った場合では後者の方が人間の体が反応すると研究結果に出ています。意識で目指すものには変化がなく、明確な数値がある方が効果があります」と清水トレーナーは説明する。 今後、K.O.H.のウェイト練習ではAIと小型カメラによって3次元の動きが追跡されるマサチューセッツ工科大学で開発されたPerchという計測機器を導入するが、そのような計測機器を使うことで「その数値が伸びてこない理由や課題を可視化しながらトレーニングが行える点が優れています」と伊藤トレーナーは付け加える。
悩んでいる選手に使ってほしい
「特に悩んでいる選手にぜひ使ってほしい」 施設の構想5年と菊池は話すが、それよりももっと前から、トレーニング施設の在り方について思いを巡らせてきた。 プロ野球選手はオフになると沖縄やハワイなど暖かい場所で自主トレを行う。一人で行う選手もいるが、ベテラン選手から学びたい若手選手なども一緒に練習するのが恒例になっている。 「西武時代は沖縄で自主トレをしていましたが、ホテル、食事場所、トレーニング、そして野球場が離れていて、移動が多かったんです。練習場所を他の球団も使用するので、時間で区切ったり、ブルペンは30分毎など制限がありました。若手の時は先輩と一緒に自主トレがしたいので沖縄やハワイに行っていましたが、例えば年俸1000万円で自主トレに100万円くらいかかるのは若手の時はしんどかったですし、僕が年長になってから若手選手が同じように『一緒にやりたい』とついてきてくれた際に、それだけのことを僕が返してあげられているか疑問もありました」 野球だけに集中できて、練習から体のケアまでが一つの場所に集約されている場所があったらいいのに。無いのであれば、いつかそういう施設を作って日本の野球界に還元したいとも思っていた。 「K.O.H.では朝から晩まで野球やトレーニングや食事ができて、お風呂も入れてケアも受けられる。そして動作解析もできるんです」
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