「エンゼルスと97億円の大型契約」菊池雄星が自ら作った野球施設「King of the Hill」で伝えたいこと「悩んでいる選手に使ってほしい」
3年総額97億円という大型契約でエンゼルスに移籍することが決まった菊池雄星投手。自身がプロデュースして故郷の花巻市に建設した野球施設「King of the Hill」が11月にオープンした。「構想5年、着想2年」という年月をかけて完成した“夢の全貌”を徹底レポート! <全2回の後編/前編も公開中> 【写真】えっ、130キロを持ち上げる菊池雄星!息子の嶺雄(れお)君にボールを投げる姿も…雄星が故郷に建てた野球施設「キング・オブ・ザ・ヒル」の全貌と最新機器を見る! 「ボールをよく見て」 「捕手の胸元をしっかり見て投げて」 野球の指導でよく耳にする言葉だ。 しかし実際に、投手や打者が「よく見ているか」を肉眼で確認することは難しい。また「ボールが外れた、打てない=よく見ていない」ではないし、「ストライクが入った、打った=とてもよく見ている」という訳でもない。 「King of the Hill(K.O.H.)」の『アイトラッカー』という機器では、人の視線の動きを可視化し、分析し「よく見ているかどうか」を実際に自分の目で確認することができる。 長年、菊池雄星投手のトレーナーを務める伊藤健治さんが『アイトラッカー』と呼ばれる特別なメガネをかけてバットを振ると、伊藤さんがどこまでボールを見ていたのか、どこで目を離したかといった視線のデータがパソコンに送られた。またほかの機器も並行して使用し、スイングの動き、角度、頭や腰の位置などを画面で確認することができた。
菊池自身が実際に使った機器を導入
今回、K.O.H.に導入された様々な機器は菊池雄星投手が実際に使い、その効果を肌で感じたものばかりだが、伊藤さんが『アイトラッカー』の導入に至った経緯を教えてくれた。 「2022年のことですが、雄星さんの投球フォームを確認するために僕が打席に入った時に、雄星さんの視線が左打者の左上を向いているような気がして、『もう少し視線を真っ直ぐ向けてください』と伝えたら、真っ直ぐ見ていると返答されたんです。つまり本人はズレがあると認識していなかったんですね。でも実際、投げた後のフォロースルーが一塁側に流れてしまいフォームに安定感はありませんでした」 伊藤トレーナーは視線の動き(頭の位置)を直すことで、フォーム改善、そしてパフォーマンス向上に繋がるのではないかと考えた。そこで2022年オフの冬季練習で菊池は『アイトラッカー』を着けて投球し、自らの視線にズレがあることを認識し、そこからフォーム改良に着手して、好結果に結びつけている。 「こちら側が一方的に『ズレているので直しましょう』と選手に言っても選手本人がそう感じていなければフォームなどを直すことはできないんです。データがはっきりと数値化されることで、選手もズレがあることを認識できる。そこから一緒にフォームの改良や改善などに着手できるんです」と伊藤さん。 上記に加えて、K.O.H.のブルペンやバッティングレーンにはメジャーやプロ野球の各球団でも導入している『トラックマン』や『ラプソード』などピッチング・バッティングデータの測定・分析用トラッキングシステム、ハイスピードカメラが設置され、選手の動作やパフォーマンスの分析を行っていく。 「(前所属の)ブルージェイズの春季キャンプ施設は投打のラボを持っていますが、そこで使われている機器も今後入れていく予定です。科学は進歩しているので、分析はもちろんデータの見方も含めて指導を進め、データを理解できる指導者も育てていきたいと思っています」と菊池は話す。
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