ドーハ世陸の最強メンバー400mリレー銅メダルは東京五輪の金メダルにつながるのか
その結果が、アジア新記録となる37秒43での銅メダル。日本の4人は、「37秒4は絶対に出るし、出せたら金が見えるぞ」と土江コーチから送り出されただけに、順位に関しては満足していない。 予選のバトンパスで大きくロスした米国は決勝でしっかり合わせてきて、英国は予選から安定感抜群のレース運びを見せている。強豪国がバトン練習にも重点を置くようになり、以前と比べて日本の優位性はなくなりつつあるようだ。そうなると「スプリント力」がものをいう。今大会のトップ3の100mベストを比べると、日本の“弱さ”が浮き彫りになってくる。 米国はコールマン9秒76、ガトリン9秒74、ロジャース9秒85、ライルズ9秒86。英国はジェミリ9秒97、ヒューズ9秒91、キルティ10秒01、ミッチェル・ブレイク9秒99。日本はというと、多田10秒07、白石10秒19、桐生9秒98、サニブラウン9秒97(他に9秒98の小池、10秒08のケンブリッジと飯塚翔太。それから今回のリレーメンバーから漏れたが10秒00の山縣亮太がいる)。米国には大きく離されており、英国と比べてもタイムは落ちる。 また今大会は米国が100m王者のクリスチャン・コールマンを、中国は100mアジア記録保持者9秒91の蘇丙添を起用するなど1走のレベルが高騰した。来年もこの傾向が続くようだと、1走のレベルを上げなければ序盤で出遅れてしまう。 「他の国も研究し始めているので、今後は個の力が大切になってきます。9秒台は当たり前で、どこまで深く入れるのか。9秒9前半とか9秒8台に入ってくる選手が出てこないと互角に戦えないのかなと思います」と土江コーチが言えば、サニブラウンも「バトンパスは日本が一番うまいと思っているので、走力の部分でもう1、2段階あげていかないと金は全然見えてこない」と話す。 土江コーチはサニブラウンを2走に起用する構想を持っており、2020年東京五輪に向けて、日本代表のオーダーはまだ固まっていない。それでも2年前のロンドン世界選手権で0.56秒差をつけられた英国を相手に、今回は0.07秒差まで迫ったのは、金メダルに一歩近づいたといえるだろう。米国を自力で倒すことは難しいが、英国に競り勝ち、バトンパスの安定感を欠く米国を脅かす存在になれば、東京五輪の金メダルは現実的な目標になるからだ。 「米国と英国はちょっと前までとても戦えるような相手ではありませんでした。いまはあわよくばというところまできているので、着実に進歩はしていると思いますね。バトンに関しては積み上げてきたものがありますし、そこに走力が伴ってきた。現在の日本チームに36秒台を出せる力はありませんが、そこに至るポテンシャルはあると思います。あと1年しかないですけど、今回走ったメンバーと小池君、ケンブリッジ君、山縣君らが競争して、さらに高いレベルまで引き上げることができれば、37秒0に近づけるのではないでしょうか」(土江コーチ) 来夏の東京五輪では4人の侍が、ラグビーW杯の日本代表を上回るほどの歓喜を呼び込んでくれることを信じたい。 (文責・酒井政人/スポーツライター)