ジョーダン・ヘンダーソンが振り返る、リヴァプールがマドリードに敗れた経験の差。「勝つときも負けるときも全員一緒だ」
ロリスはおそらくラモスとの衝突で脳震盪を起こしていた
だが、後半はよくなかった。モーの怪我はサポーターにも影響を与えていた。後半開始5分に、珍しいゴールを決められた。ロリス(カリウス)がペナルティエリアの端でボールを押さえたとき、危険は何もなかった。フィルジル(ファン・ダイク)が僕に何か指示の声を上げており、それからロリスがデヤンにボールを送るのが見えた。 ただし、そのボールが彼の手を離れた瞬間、ベンゼマが右足を突き出してさえぎった。ボールは10メートルほど転がって、ポストの内側に入った。僕はよく見ていなかった。振りかえったときは、ボールがラインを越えるところで、すぐに手を挙げて審判にファウルのアピールをした。だがファウルはなかった。マドリードが1点リードした。 翌日になってわかったのだが、ロリスはおそらくラモスとの衝突で脳震盪を起こしていた。ユルゲンによれば、試合後の検査で頭部の負傷が判明した。脳震盪があの日のパフォーマンスに影響を与えたのかもしれない。もちろん、僕たちは試合中にはそのことを知らなかった。誰も予測していなかったボディブローのような失点でリードを奪われた。それはマドリードにとっては贈り物だった。彼らは自分から何もする必要がなかった。だが5分後に、同点に追いついた。ミリー(ジェームズ・ミルナー)がコーナーを高いボールでペナルティエリアの奥に入れ、デヤン(ロヴレン)が競り勝ってゴール前にボールを送る。サディオ(マネ)がすばやく反応してゴール前で押しこんだ。あのときの歓声はいまも耳に残っているし、もしかして勝てるかもしれないと考えた。 だが後半15分過ぎにイスコに代わってベイルが入り、その3分後、ゲームは大きく動いた。マルセロが左サイドでボールを持ち、右足で中央に切れこんだ。ゴール前に上げたクロスは僕の頭上を飛んでいった。振り向くとベイルが空中にいて、驚異的な左足のオーバーヘッドでそのボールに合わせた。ロリスにはどうすることもできなかった。 チャンピオンズリーグ決勝での、歴代最高のゴールを投票で決めたら、どうなるだろうか。レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダンが、2002年にハムデン・パークでレバークーゼン相手に決めたゴールが最多の票を集めるかもしれないが、このゴールもそれに迫るはずだ。そのジダンはもちろん、キーウでのあの晩、レアルの監督としてサイドラインの脇に立っていた。 僕たちはもう一度立ち向かっていったが、終了7分前に、ベイルがロングシュートを放った。ロリスはそれを捕ろうとしたが、ボールは両手に当たったあと、ネットに刺さった。これで決まった。 試合終了だ。これこそマドリードだった。彼らのプレーはとりたててよくはなかったと思うが、質の高いプレーで、いつでも相手を叩きのめすことができる。これで3年連続してチャンピオンズリーグのトロフィーを掲げることになった。