安静にと寝込んだら、さらに事態が悪化…高山に行くなら知っておきたい、「出たらヤバい」と思った方がいい高山病の症状と「その時、どうするか」
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】富士山で突然死も不自然ではない、心拍の実験で判明した低酸素環境の過酷さ 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 富士山をはじめ、シーズンを迎える高山登山において、高山という環境からの影響や対策を、運動生理学の観点から数回にわたって解説しています。今回は、低酸素症(高山病)の症状と、その対策についての解説をお届けします。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
高山病の定義と症状
ここで高山病について説明します。 その定義は、頭痛に加えて、 食欲不振や吐き気疲労感や脱力感めまいやふらつき のうち、1つ以上がある場合です(頭痛+1~3のどれか1つ)。 以下の「急性高山病(AMS)診断スコア」と題した一覧は、医師が高山病を診断するときに使うもので、4項目の点数を合計し、3点以上あれば高山病と診断します。趣旨を理解していれば、一般の人が自己診断するための参考にもなります。 急性高山病(AMS)診断スコア 頭痛 0 まったくない1 軽度3 中程度4 激しい頭痛 胃腸症状 0 食欲良好1 食欲がない、吐き気がある3 かなり吐き気がある、嘔吐4 耐えられないほどの吐き気と嘔吐 疲労・脱力 0 まったくない1 少し感じる3 かなり感じる4 耐えられないほど感じる めまい・ふらつき 0 まったくない1 少し感じる3 かなり感じる4 耐えられないほど感じる 頭痛があることに加え、そのほかの症状の点数も含めて、3点以上のときに高山病と診断する。AMSとは、acute mountain sicknessの略 高山病は、かならずといってよいほど頭痛をともないます。これは、低酸素の影響で脳の水分量が増えて腫れが起こり、それが頭蓋骨という固い器の中で圧迫されて、痛みを感じるためです。めまいやふらつきも、このような脳の変調によって起こります。 高山病は、体力のあるなしに関係なく、高所に行けば誰もが経験しうるものです。ただちに危険な状況というわけではなく、低酸素のストレスが身体にかかっていることを警告する信号だと考えてください。症状を感じたらその高度で安静にしていれば、低酸素への順応が進み、自然に治っていきます。