地球外生命体が存在した痕跡を発見するために優先すべき3つの条件
地球外生命体の存在が明らかになる日は来るのでしょうか? SF映画や小説に登場する宇宙人たちは、地球上の知的生命体以外の存在を確認したいという我々の探求心を刺激してきました。これまで地球外生命体が存在したという痕跡は発見されていませんが、「ハビタブルゾーン」と呼ばれる、生物の生存が可能だと思われる条件を備えた恒星周辺を公転する惑星はすでに複数発見されています。とはいえ、こうした太陽系外惑星の数は多く、詳細な調査には膨大な時間が必要です。 スイス・チューリッヒ大学のFranziska Mentiさんが率いる研究グループは、地球外生命体が存在したという痕跡を確認するミッションにおいて優先すべき3つの条件を論文内で提示しました。
地球外生命体を探査する2つのプロジェクト
アメリカ航空宇宙局(NASA)が運営するデータベース「エクソプラネット・アーカイブ」によると、2024年10月現在で確認された太陽系外惑星は約5000個に上ります。これらの中には、ハビタブルゾーン内に位置する惑星も含まれ、たとえば「ケプラー22b」、「ケプラー442b」、「ケプラー186f」、「プロキシマ・ケンタウリb」などが水が液体として存在できる条件を備えている可能性があります。ただし、これまでに地球外生命体が存在したという痕跡が確認された事例はありません。 この大きな謎に迫るため、NASAは「Habitable Worlds Observatory(HWO)」というプロジェクトを遂行中です。HWOは惑星系を詳細に観測し、惑星の大気中の水、酸素、メタンなどの成分を分析して、生命を支える条件が整っているかを評価しています。いっぽう、欧州宇宙機関(ESA)が提案中のプロジェクト「Large Interferometer For Exoplanets(LIFE)」は、系外惑星からの赤外線放射を検出し分析することで、大気組成を調査しようというものです。
研究グループが提案する優先すべき3つの条件
Mentiさんの研究グループによると、これら2つのプロジェクトには課題があるといいます。太陽系外惑星の数は膨大であり、赤外線スペクトルを詳細に分析し地球外生命体が存在したという痕跡を突き止めるまでの時間がかかります。そのため、生命が存在する可能性の高い惑星から調査を開始することで、プロジェクトの効率を向上させることが期待されます。 Mentiさんの研究グループは、提案中のLIFEプロジェクトにおいて、地球外生命体が存在したという痕跡をいち早く発見するための指針を提示しました。この指針には次の3つの条件が含まれています。 条件1:地球から30パーセク(約92.6光年)以内の主系列星で、安定した軌道を持つ惑星系が存在する可能性が高い単一星あるいは遠隔連星のいずれかを含むこと。ただし、単独の褐色矮星や白色矮星は除外する。 条件2:HWOとLIFEによる観測に最適な空の領域に位置する星系。たとえば、惑星系の軌道平面が地球の公転面と一致している場合、太陽が観測を妨げる季節があるため観測を1年通じて継続することは難しい。 条件3:大気と優れた観測条件を備えた近隣惑星を含む「ゴールデンターゲット」と呼ばれるグループ。現在、約10個が知られており、今後リストに追加される可能性がある。 興味のある方は、ドイツ天体物理仮想観測所(GAVO)が公開している「LIFE Target Star Database」を参照して、惑星系や系外惑星に関する情報を確認してみてください。 Source Menti, F., Caballero, J. A., et al. - Database of Candidate Targets for the LIFE Mission (Research Notes of the AAS) Universe Today - Here are Some Potentially Habitable World Targets for the Upcoming LIFE Mission NASA - Habitable Worlds Obserbatory GAVO - The LIFE Target Star Database LIFETD Quanz, S. P., Ottiger, M., et al. - Large Interferometer For Exoplanets (LIFE) (Astronomy and Astrophysics) Large Interferometer For Exoplanets (LIFE)
Misato Kadono