がくがく震える、意識混濁 けいれん発作にどう対応?…関連学会が教職員や保育士向けの対応マニュアル作成
学校や保育施設で児童や園児がけいれんなどの発作を起こした際、教職員や保育士が適切に対応できるよう関連学会がマニュアルを作成しました。専門医の監修で、状況に応じた対処方法をイラスト付きで分かりやすく示しています。(安藤奈々) 【図表】けいれん発作が起きた時にどう対応? 関連学会が作成したチャート図
症状と原因 様々
発作には、全身ががくがく震えたり、つっぱったりする「けいれん」や、意識が薄くなり、ボーッとする「意識混濁」などの様々な症状があります。発熱がきっかけとなる「熱性けいれん」のほか、脳が一時的に過剰に興奮する「てんかん」などが原因になります。
熱性けいれんは、生後6か月から5歳の乳幼児の3~9%に起こります。また、てんかんの患者は全世代で約100万人いるとされ、子どもの発作は決して珍しくはありません。突然の発作で転倒してけがをするリスクや、長く続くと命に関わることもあります。そこで、日本小児神経学会と日本てんかん学会合同の作業部会は、発作時の対応マニュアルを作成しました。 マニュアルは2種類で、初の発作など幅広いケースを想定したものと、既にてんかんなどと診断されている子ども用があります。
幅広いケースの想定では、けいれんを起こし、呼びかけにも返事をしない場合、まず子どもを横たわらせます。その上で人を呼び、周囲からけがの原因になるような危険なものを取り除きます。その後の診断や治療に役立てるため、様子を観察・記録するよう勧めています。けいれんが短時間で収まり、意識があれば医療機関を受診させ、意識がはっきりしない場合には救急車を呼ぶ、としています。
「てんかん向け」別途
もう一方の、てんかんの診断を受けている場合は、発作を抑える薬を使うタイミングなどを主治医があらかじめ書き込めるようになっています。作成を主導した埼玉医大総合医療センター小児科教授の是松聖悟さんは「医療者でなくても分かりやすいようチャート図にしました。全国の教育や保育の関係機関に周知していきたい」と話しています。 京都府の特別支援学校に通う高橋陽斗(はると)さん(13)は、難治性てんかんの「ドラベ症候群」です。学校は、校内で発作が起きた時の対応を記した独自のマニュアルを用意しています。 今年6月、体育の授業中に発作が起きた際、担任から連絡を受けた養護教諭が発作を止める薬を投与しました。救急車で病院に運ばれ、検査の結果、治療は不要となり、その日のうちに帰宅しました。母の知永子(ちえこ)さん(51)は「学校の対応に安心できました。学会のマニュアルで全国の学校が同じ対処をできるようになれば」と期待をかけます。 両学会は、てんかんと診断されている場合、体育の授業などで学校に求められる配慮について医師が記入する「生活指導箋」も作成しました。ランニングや水泳など運動の種類ごとに、「通常」「手の届く範囲に教職員がいる」など六つの選択肢から主治医が一つにチェックを入れます。 作業部会委員長で東京女子医大小児科准講師の伊藤進さんは「病気を理由に体育に全く参加できないといった画一的な対応ではなく、個々に合わせて参加できるよう役立ててほしい」と求めています。