斎藤元彦兵庫県知事とPR会社の関係、どこが問題?疑惑の焦点、公職選挙法の「特定寄附」とは
出直し選挙で111万票を獲得し、兵庫県知事に再選した斎藤元彦氏。その選挙運動をめぐり、地元のPR会社が業務として斎藤陣営のSNS発信などを担ったのではないかとの疑惑が沸騰しています。公職の候補者が報酬を支払うと約束して選挙運動をさせる行為は、公職選挙法違反の「運動員買収」に当たる恐れがあるからです。さらに金銭提供がなかったとしても「特定寄附に該当するのではないか」との指摘も出ています。その「特定寄附」とは、いったい何を指すのでしょうか。過去に違反に問われた実例はあるのでしょうか。やさしく解説します。 【写真】選挙カーの上で斎藤氏を撮影する人物、SNSに配信? (フロントラインプレス) ■ 「買収」「特定寄附」、公選法はどう規定? 資金力を持つ一部の金持ちだけが有利にならないよう、公職選挙法はさまざまな制限を設けています。選挙カーの台数、ポスターやビラ、ハガキなどの枚数、看板のサイズなど、「ここまでやるの?」と驚くような細かさです。 選挙運動費用にも制約があり、例えば、衆院選の小選挙区では「選挙区内の有権者数✕15円」と「固定額1910万円」を足した金額を上限としなければなりません。 いずれも有権者一人ひとりがカネや、カネにものを言わせた宣伝戦に左右されず、個人の自由な意思で投票先を選べるよう環境を整えているわけです。自由意志による選挙の実現は、民主主義を支える根源です。 公選法は「買収」にも厳しい目を光らせています。 有権者に対し、(1)金品や財産上の利益、(2)職務の供与、(3)食事などの接待・供応を行って投票を依頼すると、買収罪が成立します(投票買収)。また、運動員に対して報酬を渡しても、買収罪が成立します(運動買収)。 これらの買収罪は金品の提供などを実行していなくとも、その約束や申込みがあっただけで成立するという厳しいものです。 買収罪には3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、および公民権停止が科せられます。停止の期間は、罰金刑は5年間、拘禁刑の場合は刑期終了後さらに10年間という厳しさです。 さらに公選法には「選挙が行われる自治体と特別の利益を伴う契約の当事者は、選挙に関して寄附をしてはならない」という趣旨の条文もあります。これが「特定寄附の禁止」です。 〈衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。〉(公選法第199条) さらに同条は「会社その他の法人が融資(試験研究、調査及び災害復旧に係るものを除く。)を受けている場合」においても、融資を受けている者は当該選挙に関して寄附をしてはならないと定めています。 自治体や国と特別な利益関係を持つ業者などが、これまでのお礼として、あるいは今後の契約実現などへの期待を込めて候補者側に寄附し、それによって一部の者に便宜が図られるようなことがあってはなりません。