CLAN QUEEN、WWW Xで送り届けた壮大で深淵な総合芸術
アートロックを標榜する新世代ユニット・CLAN QUEENの快進撃が止まらない。 CLAN QUEENは、yowa(Vo)、AOi(G)、マイ(B)の3人によるユニットで、前身バンド・WARS iN CLOSETからボーカルが脱退したことをきっかけとして、2022年11月、現在の3人体制での活動を始動した。重要なポイントは、楽曲制作にとどまらず全てのクリエイティブを自分たち自身で手掛けていること。AOiは、作詞作曲に加えて、アートワークの制作を担当。マイは、映像監督としてミュージックビデオの監督やライブの映像演出を務めている。(マイは、水曜日のカンパネラ「バッキンガム」「織姫」をはじめ、他のアーティストのミュージックビデオの監督も手掛けている)。それぞれのメンバーが活動の幅を広げ続けていることが、そのままCLAN QUEENの“アートロック”の進化・拡張へと繋がっていて、言うまでもなく、3人の表現は、楽曲、ビジュアル、映像、それら全てが結集するライブの空間でさらなる真価を発揮する。 【ライブ写真】CLAN QUEEN、WWW X公演の様子(全5枚) 4月28日、1st ONEMAN SHOW「The VeiL」がShibuya eggmanで開催された。チケットは、公演3カ月前の時点でソールドアウト。11月から始まった1st ONEMAN TOUR「PARADE OF TOYS」は、7月末の時点で追加公演も含めた全4公演がソールドアウト。これらの動向から、今のCLAN QUEENに寄せられる期待と注目の大きさを窺い知れる。このツアーにおいては、それぞれの公演ごとにテーマが設けられていて、それに伴いセットリストも公演ごとに刷新された。11月9日、東京・WWW公演「Outer Cinema」(映画のような物語形式の映像演出)。11月15日、大阪・Yogibo METAVALLEY公演「Showtime Clock」(楽曲に合わせた映像演出)。11月17日、愛知・ell. FITSALL公演「Live in Chest」(ライブそのものの価値)。そして、その3つの公演を解剖して再構築したのが、12月20日、東京・WWW Xで開催された追加公演「TOYS ANATOMY」だ。この記事では、同公演の模様をレポートしていく。 まず会場に入って目に飛び込んできたのが、「ヘルファイアクラブ」から「自白」までのミュージックビデオのポスターの展示だった。一つひとつのポスターが一堂に並ぶ光景は、あまりにも壮観。これはライブ本編にも通じるが、楽曲、ビジュアル、映像をはじめとしたCLAN QUEENの全てのクリエイティブには、明確な意図と妥協なき意匠が宿っている。ライブ会場に足を踏み入れた瞬間から、3人の創作にかける想い、いや、人生をかけて創作に挑む揺るがぬ覚悟がはっきりと伝わってきて、まだライブが始まる前にもかかわらず、さっそく圧倒されてしまった。 「全神経を研ぎ澄ませて、お楽しみください」という開演を告げるアナウンスが流れ、いよいよライブがスタート。まず、マイが手掛けた映像がスクリーンに映し出される。自己と他者、そして、全てを取り巻いていく世界。不安定で、不透明で、不条理なこの世界を生きる中で、否応もなく胸の中に去来する不安や葛藤、迷い、そして、孤独。そうした切実な心情風景を伝えていくナレーションは、「街は喧騒に溺れている。」「静かな夜に辿り着けるまで、私たちはパレードを続ける。」という宣戦布告のような言葉で結ばれる。 そして、オープニングナンバー「Loud Land」へ。yowaとAOiのマイクリレーによって次々と放たれる言葉たちは、私たち一人ひとりに絶えず思考を促す。それは、音源を聴く時にも通じる感覚ではあるが、ライブでは、生身のダイレクトなコミュニケーションを通して、一つひとつの思考を促す言葉たちが、より深く脳裏に突き刺さっていく感覚を抱く。AOiはギターを掻き鳴らしながら「歌え!」と叫び、一人ひとりの観客にこのライブの当事者であることを求め、そして、彼の想いに呼応するようにフロアから熱烈な合唱が巻き起こる。続く「サーチライト」では、yowaが台の上に立ち、並々ならぬフロアの熱狂をさらに容赦なく牽引していく。「プルートー」では、AOiの呼びかけを受け幾度となく一斉ジャンプが巻き起こり、「Tokyo Mood」「ファンデーション」では、フロア全体が妖艶なフィーリングが満ちたダンスフロアへ一変。マイによるベースは、全ての曲において一貫してグルーヴの要を担っていて、どの楽曲からも、音源を聴く時とは似て非なる熱い高揚感が伝わってくる。まだライブは始まったばかりだというのに、既にして凄まじい情報量と体験の密度だ。