CLAN QUEEN、WWW Xで送り届けた壮大で深淵な総合芸術
ステージとフロアの境界線が溶けていくかのような猛烈な熱気
幕間映像を経て、「アリスの嘘」へ。yowaは、時おり声を震わせながら切実なエモーションを全身全霊で歌い届け、曲の最後には、言葉にならない想いを圧巻のフェイクに託して伝え抜いていく。「天使と悪魔」におけるハイトーンも圧倒的で、彼女のシンガーとしてのポテンシャルに改めて驚かされた。幕間映像(「自白」の《純粋でいたいだけです》《それが君にとっての 悪でも構わないです》という歌詞に通じるナレーションが届けられた)を経て披露されたのは、「HARU」。3人ともアクショは小さめだったが、鮮烈なライブパフォーマンスを通して、この楽曲に宿る切実な感傷が痛いほどひしひしと伝わってくる。そして、「ハッピーエンドを望む、私はきっと、バッドエンド。」と告げる幕間映像を経て、「Bad End」へ。まるでダムが決壊したかのように、壮絶な轟音が容赦なく轟いていく圧巻の展開。その上に重なる、凛とした響きを放つ美しい歌のメロディ。その2つが分かちがたく溶け合うアンビバレントな表現に、思わず息を呑んだ。 AOiの「皆さんが知らないかもしれない一曲を持ってきました。」という言葉を添えて披露されたのは、未音源化楽曲「幽体離脱」だ。AOiが、12月8日、Xで、「フルを作る気がなかった『幽体離脱』」を最後まで作ってみることにした」と投稿していたことを踏まえると、同曲のフルver.は完成したばかりであることが推測できる。粋なサプライズに驚かされたし、また、この曲の他にもTikTokで一部が公開されている楽曲がまだまだあることを思うと、CLAN QUEENが誇るポテンシャルの底知れなさに痺れる。続いて「NEW ERROR!!」、そして「ヘルファイアクラブ」へ。《僕らは きっとどうしようも無くて 死に行くが 希望を今でも》という歌詞が、3人と観客がお互いに連帯を確かめ合う言葉として輝かしく響く。 会場全体を満たす熱狂は、「求世主」でさらに昂っていく。ステージとフロアの境界線が溶けていくかのような猛烈な熱気。3人と観客がお互いに手を取り合いながらカオスの彼方を目指していくかのような熾烈な展開。熱すぎてもはや清々しさすら感じる中、マイが下手の台の上に上がって大らかにバウンスする豪快なベースを轟かせ、そして、AOiの「渋谷、好きに踊ろうぜ。」という呼びかけと共に「APPLE」へ。地獄の底を蠢くような壮大な合唱。その一体感は、続く「花一匁」「踊楽園」へと引き継がれていき、さらにここで最新曲「ゲルニカ」がドロップされる。まるで全てのパラメータを攻撃力に全振りしたかのような熾烈なロックチューン、圧巻だ。容赦なく爆走する展開に、懸命に拳を突き上げながら伴走していく観客たち。熱烈な疾走感を湛えたまま、ついにライブはクライマックスパートへ突入。yowaの「CLAN QUEENでした、ありがとう」という感謝の言葉と共に披露された「自白」で、会場全体の高揚感と一体感はさらなるピークを更新。熱烈なムードの中で幕締めを迎えるかと思いきや、この日のラストを飾ったのは、「PSIREN」だった。思わず身の危険を感じるほどの重低音が轟き、鮮烈なライティングによって視界が白く染まっていく。まるで、白い轟音の中に溺れていくようなショッキングな体験。同時に、どこか懐かしく、心地よい感覚も湧き出てくるから不思議だ。リミッターがぶっ壊れてしまったかのように昂り続けてるAOiのディストーションギター、その残響が耳を突き刺すように鳴り響く中、メンバーは無言でステージを去っていく。フィードバックノイズが鳴り止んだ後も、いつまでもフロアから拍手が止まることはなかった。 総じて、あまりにも壮絶なライブ体験だった。五感をハックされるような感覚。逆に、五感を解放されるような感覚。その両方が同時に去来する。矛盾するようではあるが、そうした得も言われぬ感覚を、壮大で深淵な総合芸術を通して送り届けてくれることこそが、CLAN QUEENのライブの真髄であると強く感じた。会場を出た後も、その鮮烈な余韻がいつまでも胸に残り続けた。前々から発表されているように、来年には、さらに規模を拡大した2nd ONEMAN TOUR「NEBULA」の開催が控えている。会場がスケールアップするのに比例して、3人が届ける“アートロック”のスケールと深度も飛躍的に高まっていくはず。期待して待ちたい。 セットリスト 1. Loud Land 2. サーチライト 3. プルートー 4. Tokyo Mood 5. ファンデーション 6. アリスの嘘 7. 天使と悪魔 8. HARU 9. Bad End 10. 幽体離脱 11. NEW ERROR!! 12. ヘルファイアクラブ 13. 求世主 14. APPLE 15. 花一匁 16. 踊楽園 17. ゲルニカ 18. 自白 19. PSIREN <ライブ情報> 6月27日(金) 愛知THE BOTTOM LINE 7月6日(日) 大阪BIGCAT 7月12日(土) 東京 Zepp Shinjuku 8月23日(土) 神奈川 KT Zepp YOKOHAMA(追加公演)
Tsuyoshi Matsumoto