「山崎」と合わせ100億円投資 “白州”蒸溜所リニューアルの背景【WBS】
独特の形をした蒸溜釜や天井までビッシリと並んだ樽。この施設で作られているのが、サントリーのウイスキー「白州」です。この白州の蒸溜所がこの夏、リニューアルしました。サントリーは去年、もうひとつのウイスキーブランド「山崎」の蒸溜所もリニューアルしていて、投じた金額はあわせて100億円にのぼるといいます。その背景には何があるのか取材しました。 東京からおよそ2時間半。山梨・北杜市にあるサントリーの白州蒸溜所。去年50周年を迎え、リニューアルした内部を一足早く報道陣に公開しました。案内された蔵で貯蔵されている樽の数は約2万個。温度調整は一切行われず、白州の森の自然環境により樽が呼吸します。ここで数年から数十年間熟成されます。
そして、今回のリニューアルで一番こだわったという場所があります。 「地面にじゅうたんのように敷き詰められているものは何ですか?」(田中瞳キャスター) 「発芽している途中の大麦です」(「サントリー」白州蒸溜所の不野健太郎さん) ウイスキーの原料である大麦を床の上で発酵させる伝統的な製法「フロアモルティング」。手作業で発芽を促すことで、味わいがより深くなるとされています。 豊かな自然により熟成されたウイスキー白州。田中キャスター、ハイボールにして飲んだ感想は? 「後味もすっきりしていて、とても穏やかな味わいです」(田中キャスター) サントリーは白州蒸溜所と大阪・島本町にある山崎蒸溜所に対し、去年から合わせて100億円規模の投資をしています。巨額の資金を投入した理由について、「サントリー」ウイスキー部長の奈良匠さんは「ウイスキーが需要に対して供給が追い付いていないということに関して、本当に客に迷惑をかけていると思う。できるだけ安定供給、製造を少しでもできるように」と話します。
ジャパニーズウイスキーの輸出額が急増
メーカーが対策に迫られるほどのジャパニーズウイスキー不足。酒の買い取り・販売を手がける東京・武蔵野市にある「リカーオフ吉祥寺店」では現在、サントリーの「山崎」や「響」は在庫がなく、「白州」も小さいサイズが2本だけでした。 品薄によって販売価格も上昇し、1カ月ほど前に販売したという「山崎」の値札を見せてもらうと、1万5000円とメーカーの希望小売価格7700円の2倍ほどになっていました。買い取って店に並べても2~3日で売れていくといいます。 「外国人が欲しがるケースが非常に多い。世界的に需要が高いと思う」(「リカーオフ吉祥寺店」の牧田正人店長) ジャパニーズウイスキーの輸出額は急増していて、この10年で約13倍になっています。特に大きく伸びているのが韓国への輸出です。 「ソウル駅近くのリカーショップです。ウイスキーコーナーには、世界中のウイスキーがずらりと並びますが、日本産ウイスキーは仕入れが少なく一番端の棚にまとまっておいてある分だけだといいます」(ソウル支局の武部慎一記者) この店では、サントリーの「角瓶」や「知多」などが売られていますが、価格は日本の小売価格の約2倍。それでもよく売れるといいます。 韓国ではコロナ禍の家飲み需要もあり、若者を中心にハイボールがブームに。去年、韓国の日本からのウイスキーの輸入額は、過去最大の約800万ドル。今年はそれを上回る水準です。 世界的に需要が高まっているジャパニーズウイスキー。 サントリーはこの10年で700億円を投じ、樽の数も1.8倍ほど増やしたといいます。しかし、ウイスキーは熟成に何年もかかるため、需要に追いつくにはしばらくかかるといいます。 「10年、15年、20年かけてしか造れないので急激な需要増に応えられないというのも事実。ジャパニーズウイスキーが非常に人気になって、今も底堅い需要というのは国内外あるかなと思うので、しっかり期待に応えるべくやっていきたい」(「サントリー」ウイスキー部長の奈良匠さん)