鈴木亮平×森田望智が語る『シティーハンター』。"はじまりの物語"に詰め込んだこだわりは?
――一方で、『シティーハンター』は冴羽獠の名ゼリフ「もっこり」に代表されるように、ユーモラスな表現も多い作品です。今作ではそれをどう解釈したのでしょう? 鈴木 森田さんは原作を読んだとき、「ちょっと引いた」って言ってたよね?(笑) 森田 正直、「大丈夫かな? 今の時代だと抵抗ある方がいるかも」って思いました(笑)。 鈴木 でも、そうだよねって話なんですよね。原作は昭和に作られたので、当時の倫理観で作られてますし。今回はそれを現在の価値観にアップデートしながらも、当時と変わらぬ冴羽獠らしさを保とうとしたつもりです。 これは個人的な意見ですが、コンプライアンスが厳しい世の中になって性的なものは全部NGだと思われてしまうけど、そうではないと思うんです。性的な表現で誰かを傷つけたり、偏見を助長したり、社会に悪い影響を与えるものは避けなきゃいけない。 例えば、更衣室を覗くシーンはNGです。それは性犯罪ですから。ただ、実際にはNGでない性的なジョークの描き方は星の数ほどあるはずなんです。 森田 そのおかげで女性が見ても嫌悪感を抱かないバランスになってると思います。冴羽さんのイメージが壊れない程度に現代版にアップデートされた印象があります。 鈴木 その一方で、僕は「女性を性的に描くなら、獠もそれ以上に性的に描かれないとダメだ」とも思っていました。今回、獠が「裸踊り」をするシーンがあるんですが、そういう意味でも必要だと思って僕から提案しました。結果、『シティーハンター』らしい良いシーンになったと思います。 ■冴羽獠を冴羽獠たらしめたもの ――冴羽獠はスケベで美女に弱い一方、正義・誠実さ、槇村香を守りたいという意思を強く持っている。なぜ彼はそんな両極端な性格になったんでしょう? 鈴木 僕の解釈は北条先生とは違うかもしれませんが......少しマニアックな話になってもいいですか? あまり細かくは説明しませんが、獠って10代の頃まで"死"に囲まれて生きてきた人間なんです。大量に人を殺してきたし、周囲の人も殺されてきた。 そんな中、"ある出来事"があって、獠は廃人状態になり、死の淵を彷徨ってたんです。そのときに「教授」と呼ばれるキャラクターに介抱されて生き返ったんですね。 そして、その教授は獠のエロの先生でもあるんです。おそらく強烈に死に向き合ってきた獠に対して、生命の象徴、人間のポジティブな部分としての"性"を教えたんじゃないかと思うんです。 そして、「香や依頼人を守りたい」という気持ちは、今まで自分が犯してきたことへの贖罪のようなニュアンスがあるかもしれません。 あと、香の前では照れ隠ししているのもあるでしょうね。「俺にホレるなよ。こんなチャランポランな男だから」と遠ざけたい気持ちがどこかにある。そのついでにハンマーで叩かれるコントみたいなやりとりをするのも嫌いじゃない、みたいな。よけれるのに(笑)。