日本製鉄のUSスチール買収、日米関係に影響も-米大統領が阻止へ
(ブルームバーグ): 日本製鉄が海外事業強化を目指して打ち上げた米鉄鋼大手USスチール買収計画はバイデン大統領が阻止する準備を進める局面に至り、一部の日本政府要人も反論を始めた。一企業の問題から、日米関係に影響を及ぼす可能性も出ている。
昨年12月に日本製鉄が発表した同案件を巡り、日本政府はこれまで実質的なコメントを控えていたが、報道などを受けて5日、一部の有力政治家が口を開いた。
外相や防衛相などの要職を歴任し、9月の自民党総裁選で立候補を目指す河野太郎デジタル相は、「恣意(しい)的に政府が介入することは本来あってはならない」と指摘。買収で効率化し、生産性を上げるのは買収する側とされる側、地域社会にメリットがあるとした上で、大統領選で労組の票を欲しいということで市場がゆがめられないことを望みたいと述べた。
また、林芳正官房長官は個別の企業の経営に関する事案であり、コメントを差し控えたいとしたが、日米相互の投資の拡大を含めた経済関係の一層の強化や経済安全保障分野における協力などはお互いにとって「不可欠だ」との認識を示した。
日本製鉄による買収提案は対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象となっており、事情に詳しい複数の関係者によるとバイデン大統領はCFIUSの決定が自身に伝えられ次第、阻止する計画だ。早ければ週内に決定する可能性があるという。
バイデン米大統領、日本製鉄のUSスチール買収計画阻止へ-関係者
大統領選で共和党から立候補を予定するトランプ前大統領や激戦州の一つでUSスチールの本社がある東部ペンシルベニア州のシャピロ知事が反対の立場を表明していたほか、大統領選に立候補予定の民主党のハリス副大統領も今月に入り、同州ピッツバーグを訪問してUSスチールは引き続き国内で所有・操業されるべきだと発言した。
保守系シンクタンクである米ハドソン研究所日本講座のウィリアム・チョウ副所長はハリス氏の直近の発言について、「11月の大統領選挙でペンシルベニア州で勝つことだけを考えている短期的な政治的思惑を示すものだ」との認識を示した。