子どもの自殺が多い「9月1日」――内田也哉子が識者と考える「もし自分の子どもに学校に行きたくないと言われたら?」#今つらいあなたへ
「9月1日」は子どもの自殺が多い日
平岩: 「9月1日」のことが知られるようになったのは、2015年に発表された内閣府の資料がきっかけです。過去40年間を遡り、18歳以下の子どもたちの自殺が起きた日を分析したところ、9月1日だけが突出して伸びていることがわかりました。これは調査対象期間において、9月1日が夏休み明け最初の登校日であることに関連していると思われます。「学校に行くぐらいなら死を選んだ方がいい」と考えてしまうんですね。 ちなみに2015年以降は日別のデータが公開されておらず、また最近は8月下旬に夏休みが明ける学校も多いので、2023年現在もなお9月1日だけが突出しているとは断定しにくいです。とはいえ、夏休み明けの登校日に「学校に行くか、死を選ぶか」という二択にまで追い詰められてしまう子どもが存在しているという傾向については、現在も変わらないと見立てています。 内田: 学校に行きたくない理由は様々だと思いますが、やはり人間関係が主な要因なのでしょうか。 平岩: 必ずしも人間関係だけではないようです。2022年の分析によると、19歳以下の自殺要因で学校に関することの内訳は「学業不振29%」「進路の悩み24%」「学友不和17%」(出典:厚生労働省:自殺の統計(令和4年確定値))とあります。 内田: そういった生きづらさを感じている子どもたちに対して、周りの大人はどういった手助けができるのでしょう。 平岩: 僕は「居場所」がキーワードだと思っています。子どもたちが安心できる居場所があればあるほど、自己肯定感が持てる、将来への希望が持てるというデータがあるんですね。 子どもたちは、学校と家庭という2つの大きな居場所を持っています。さらに、学校と家庭以外に安心できる居場所、いわゆる「サードプレイス」を持つことはとても大事です。物理的な場所でなくても、自分のことを気にかけてくれる人や、成長したら一緒に喜んでくれるような大人がいれば、それもまた、彼らの心の居場所になるのだろうと思います。我々大人ができることは、そのような場所を増やしていくことだと。 内田: そのサードプレイスやフォースプレイスという考え方は、「非常口」「窓」「扉」とも言われますよね。あなたの居場所は、学校だけじゃないよ、家庭だけじゃないよ。と、身をもって実感できれば、苦しく思う子どもたちの心を支えることができるかもしれませんね。