地域のバスはもう限界…運転手不足で島の路線が廃止、困った町はNPOに白羽の矢を立てる
地域住民の移動を支える公共交通機関が細ってきている。人口減や過疎化に加えて、新型コロナウイルス下での行動制限に伴う利用減も追い打ちをかけた。鹿児島県内も例外ではない。自由に動ける態勢づくりへどうすればいいか。地域公共交通の在り方を考える。(連載かごしま地域交通 第1部「ゆらぐ足元」①より) 【写真】地域のバスはもう限界…運転手不足で島の路線が廃止、困った町はNPOに白羽の矢を立てる
平日の午前6時半ごろ、長島本島北部にある路線バスの起終点「平尾車庫前」から2台が続けて出発した。1台目の阿久根方面行きは西側へ、2台目の出水方面行きは東側へと走る。それぞれ朝一番の便だ。 東回りに乗るとバス停に止まるたび、制服姿の生徒が次々乗り込んできた。島の玄関口である道の駅近くの「だんだん市場前」までの乗客20人余りのうち、一般客は1人だった。東回りと西回りの2台は市場前バス停で合流。行き先別に数人が乗り換えると、それぞれ島外へと出て行った。 長島町内を巡る南国交通の路線バス(1日7~11便、観光兼用は除く)は9月末廃止になる。運転手不足やコロナ禍に伴う経営悪化が理由。10月以降は町が地元NPO法人・ながしま地域活性化推進機構に委託した代替バス運行となる。 町北部からバス通学する県立鶴翔高校(阿久根市)1年、西崎琥大郎(こたろう)さんは代替バス運行を喜ぶ。「親に毎日送迎してもらうのは難しいと心配だった。バイク通学は事故の恐れがあり、安全面からもバスがいい」
□ ■ □ 南国交通の撤退方針が公になった3月以降、町は代替手段を模索してきた。朝一番2台の乗客は約40人の高校生が大半を占め、人数からみてもタクシーではなくバス運行が必須。自治体が費用負担し民間委託するコミュニティーバス(コミュバス)に転換しようにも、長島町ではコミュバス運行も南国で、こちらも2025年春撤退の意向が示され、手詰まりとなった。 町内外の貸し切りバス事業者を中心に打診したものの、乗務員確保を主な理由に了承は得られなかった。 浮上したのが、町の緑化事業などを委託するNPO「ながしま地域活性化推進機構」だった。会員に大型免許所有者が複数在籍していた。町所有のバス2台を使い、会員が運転を担う形での具体化が動き出した。 10月から平日16便、土曜12便を運行する。運転者8人は本番を前に実地研修を繰り返している。川添英一代表理事(75)は「会員の力を役立てる機会が広がったと考える。安全第一に努めたい」と力を込める。
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