広島を変えた「オセロの角を取る」4つの教育改革 教育をよりよいものに、在任6年間で残した爪痕
2018年から6年間にわたり広島県の教育長を務め、今年3月に退任した平川理恵氏。リクルート出身で、女性初の公立中学校民間人校長という異色のキャリアを持ち、教育長時代はトップ自ら現場に出向いて話を聞き、よいと思ったことはどんどん取り入れた……それが一部批判につながったこともあったが、前例にとらわれずに改革を推し進め、さまざまな挑戦を行ってきた平川氏に教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が取材した。 【写真を見る】公立高校の入試に必要な内申書では欠席欄と所見欄をなくす代わりに自己表現欄を導入した 今回取材したのは平川理恵さん。この3月まで広島県の教育長を務めた女性です。異色のキャリアを持つ教育長として、いろいろな意味で注目を浴びたわけですが、在任中に数々の改革を実行し、その実践は全国に広がっているものもあります。 しかし、これまでも大胆な改革が行われて注目を集めると、その実行者がいなくなった後、揺り戻しが起きて後退してしまう例が目立ちます。「教育を取り巻くさまざまな課題が山積する中で、こうした実践が受け継がれ、さらに進化していってほしい」。そんな思いから、改めて平川氏に6年間の実践を振り返っていただきました。 読者の方にも、日本の教育をよりよくしていくために何が必要なのかを考えていただく機会にできればと思っています。
「子どもが天性を生かしながら愉快な人生を送ってほしい」
平川氏のキャリアのスタートはリクルートの営業。独立後は、オーダーメイドの留学プランを紹介する留学斡旋会社を設立し、その後は教育のど真ん中に入っていくことを選択します。全国で女性初の公立中学校民間校長となり、計8年間にわたって校長を務め、2018年に広島県湯﨑英彦知事の指名を受けて広島県の教育長に就任します。 公立初のイエナプラン教育校、商業高校での「ビジネス探究プログラム」、不登校の児童生徒のための教育支援センターの設置と県内の一部小学校、中学校などで不登校や特別な支援が必要な生徒を支援する「SSR(スペシャルサポートルーム)」の設置、内申書をほぼなくしてしまう高校入試改革など次々と挑戦を続け、この3月まで2期6年を務めて退任しました。今回改めて、わずか6年でこれだけのことが実現したことに驚きました。 そのことを聞くと、開口一番「願いは、子どもたちがその天性を生かしながら、いろいろなコミュニティを出入りして愉快な人生を送ってほしいということ。それだけなんです。そのために、教育ができることは何かを考え、できる限りのことをした」と平川氏。エネルギーの発露は「教育で日本に元気と勇気と活力を」という思いからだったようです。