広島を変えた「オセロの角を取る」4つの教育改革 教育をよりよいものに、在任6年間で残した爪痕
仕事を20%カットし、必要かつ重要なことに時間を割く
直近10年間で義務教育段階の児童生徒数は1割減少する一方で、不登校の児童生徒が30万人近くになり、特別支援教育を受ける児童生徒数も倍増。今、日本の学校教育において、不登校の増加と特別支援教育を受ける児童生徒の増加は、大きな課題になっています。 広島県では、「特別支援教育の考え方を生かした個別最適な学び推進プロジェクト」を実施。不登校の生徒の居場所である学習支援センター「スクールエス」や学校内フリースクール「SSR(スペシャルサポートルーム)」をいち早く立ち上げるなど、積極的にプロジェクトを推進し、校内フリースクールの取り組みは全国に広がっています。 平川氏は、これらの運営に際し、教育委員会の組織を再編。不登校児童生徒の支援は自殺やいじめ、警察対応を行う「豊かな心と身体育成課」から「個別最適な学び担当」に移管。特別支援学級の指導充実を、特別支援教育課から義務教育指導課に移管するなど、攻めと守りをはっきりさせ、フレキシブルな組織体制を作ってこの課題に取り組みました。 「組織改革で意識したのは、心理的安全性が保たれ、自由にものが言えるカルチャーの構築でした。また、限りある人材を活かすために、今ある仕事を20%カットし、必要かつ重要なことに時間を割くことを徹底しました」(平川氏) さらに、指導主事がスクールエスで直接子どもを指導したり、担当校に籍を置き、特別支援教室で直接子どもと関わって授業改善の提案を行うなど、これまではあり得ないと思われてきたことを次々と実行に移した平川氏。それは、「スーパーバイザーではなく、一人の先生として現場を見て仕事をしなければ変わらない」という意思を貫いたから。こうした改革を通して、職員もフラットな関係性の方が意見も出やすいことを体感し、教育委員会自体が主体的・対話的・深い学びをする組織になっていったのだそうです。 「広島の教育をよりよいものにしていくために、教育委員会のカルチャーを変えてほしい」という知事の依頼(『子どもが面白がる学校を創る』〈日経BP〉)に応えた平川氏の取り組みは、ある意味現場に緊張感をもたらしたかもしれませんが、全ては子どもたちの幸福のためだったのだとインタビューを通して感じました。