開幕V発進の紀平梨花のトリプルアクセルはどう進化したのか?
フィギュアスケートのシーズン前哨戦となる「オータムクラシック」がカナダで行われ、今季初戦となる紀平梨花(17、関大KFSC)がショートプログラム(SP)、フリースタイル(FS)共に1位の計224.16点で優勝を飾った。SP、FS共に新曲と新しい振り付けで挑み、SPではブルーで統一した衣装で「ブレックファスト・イン・バクダッド」を華麗に演じて冒頭のトリプルアクセルに成功。GOE(出来栄え点)で3.04点をマークし、続く3回転フリップ+3回転トウループのコンビネーションジャンプ、3回転ループとすべてを成功させた。 またフリーではエメラルドグリーンの衣装で「インターナショナル・エンジェル・オブ・ピース」の曲に乗り、冒頭に、4回転サルコーを入れなかったが、トリプルアクセル+2回転トウループの連続ジャンプに成功。続くトリプルアクセルと、後半の3連続ジャンプの最初に入れていた3回転ルッツで回転不足を取られたが、3回転フリップ、最後の3回転ループは綺麗に着氷。ジャンプ7本で致命的なミスはひとつもなく、思わずガッツポーズが出た。 シニア2年目の紀平の進化はどこにあるのか? 元全日本2位で現在、福岡で指導者をしている中庭健介氏は、紀平の初戦をこう評価した。 「この時期の試合は、修正をしながら手探りで行います。結果よりも新しい曲や新しい振り付けでどういう評価を得られるかなどのお試しの時期です。その段階で、SP、FS共にまとまった演技をしたことは評価されていいでしょう。シニア挑戦1年目の去年は世界でどれだけ戦えるか、という挑戦者のイメージでしたが、2年目の今年は慣れた感じで堂々とした余裕が見えます。昨年はSPではミスが目立ちましたが、そこを初戦ではしっかりとまとめた意義は大きいでしょう。トリプルアクセルの成功率が上がったように見えました」 中庭氏が注目したのは紀平の武器であるトリプルアクセルの進化だ。 「跳ぶ前の予備動作の構えが短く、コンパクトになっていました。力みや迷いがなく瞬く間に跳んだというイメージです。こういうジャンプに対してはGOE評価が上がります。技術がなければできませんが、前半のジャンプで時間を効率良く使ってるので、その分、途中の演技にしっかりと時間が使われていました。SPで言うなら前半は技術、後半は魅せるというプログラム構成で、演技構成点をしっかりと取りにいこうとする狙いが見えました」