「釣りバカのハマちゃん」会社に必須な人材の理由 「古くさい管理職像」ではもはや通用しない
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。 メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、ジャーナリストの佐々木俊尚氏に話を聞いた。2回にわたってお届けする。 【写真で見る】5, 15, 50, 150・・・・・・ この数字に秘められた「すごい力」がわかる本
■成果主義では捕捉できない重要な存在 本書を読んで、平成の30年間、日本人が苦労してきたのは一体何だったのかということを感じました。 2000年頃にグローバリゼーションの波と呼ばれるものがやってきて、このままでは国際競争力を持てないとなり、「成果報酬」を入れたもののうまくいきませんでした。 営業マンや開発研究なら成果は明確です。しかし、総務部などは、何を成果として見るのかとなったわけです。 昭和の会社には、たいてい「給湯室のおばちゃん」と言われる人がいました。漫画『釣りバカ日誌』の主人公「ハマちゃん」のように、日頃は役に立ってないように見えて、実は、社内の人間関係のハブになっているという存在です。成果主義では、そのような人の成果は捕捉できません。
ただ当時は、「コストカットしなければ国際競争に勝てない」という考え方が蔓延していて、そのような経営者がもてはやされました。しかし、そのコストカットでできた余裕を、積極的な投資や研究開発には回さず、人減らしばかりしてしまいました。 そして、IT化で業務が効率化したのに、ますます業務が増えるだけという悪循環に陥り、みんなが「つらい」と言う世界になった。それが平成30年間の帰結だったのです。日本が強烈に反省すべき点でしょう。