ポテトチップスのパッケージが顧客情報の宝庫に。 カルビー が「ルビープログラム」で目指すコミュニケーションの形
顧客行動がリアルタイムに把握できたら、個々のお客さまとコミュニケーションできるのではないか。2020年9月に登場した、カルビー初のスマホアプリ「カルビー ルビープログラム」は商品についているシリアルコードに着目し、それを可能にした。 ポテトチップスのパッケージが顧客情報の宝庫に。 カルビー が「ルビープログラム」で目指すコミュニケーションの形 企業の成長につながった施策や事業を切り口に、そこに秘めたマーケターの想いや思考を追っていくDIGIDAY[日本版]のインタビューシリーズ「look inside!─マーケターの思考をのぞく─」。 今回は、Calbee Future Labo CXチームマネジャーの関口洋一氏に「カルビー ルビープログラム」スタートの背景を聞くとともに、同氏のマーケティング思考にも触れた。 ◆ ◆ ◆ DIGIDAY編集部(以下、DD):スマホアプリの「カルビー ルビープログラム」は、商品の袋を折りたたんで、シリアルコードを写真に撮ってアップロードするとルビー(ポイント)がもらえるという仕組みですよね。 関口洋一(以下、関口):我々は「折りパケ」と呼んでいますが、パッケージを折りたたむことで重要なのは、袋が空になっているということです。つまり「この商品を食べた」ということが確実に判断できる方法です。 もともとは「ゴミの嵩を減らせないか」という環境的課題が別のプロジェクトで上がっていて、折りたたむというアイデアはそこから着想しました。
10万人のハガキデータを拾いたい
DD:アプリをリリースした狙いはなんでしょうか。 関口:リリース当時、私はデジタルマーケティングを担当していたのですが、カルビーには「お客さまのデータ」がありませんでした。1年に1度、10万人に北海道のじゃがいも2㎏が当たる「カルビー大収穫祭」という人気のキャンペーンを行っていますが、応募の方法はハガキです。 対象商品のパッケージ裏にある応募券を切り取って、ハガキに貼って送るというものです。10万人に当たるということは、10万人以上のデータがあり、マーケティングにも使えるはずなのですが、担当者に聞くと「キャンペーン終了後は破棄している」と。 個々の属性データはもちろん、応募券を見ればそのお客さまが何を食べたかというデータになります。それを毎年追いかけていけば嗜好の変化も分かります。非常に有用なデータですが、手作業でデータ化するのは莫大なコストがかかり、データとしては残せません。 それをどうにかデータ化できないかと考えたのがアプリでした。今は、大収穫祭の応募はハガキでもアプリからも応募できるようになりました。データを拾うのはアプリのみになりますが、応募比率は年々アプリが増えてきています。 関口 洋一/カルビー株式会社Calbee Future Labo CXチーム マネジャー。前職でのシステムエンジニアを経て、2017年にカルビー入社。直営店「カルビープラス」の運営を担う部門に所属し、店頭のデジタル化のためのシステム構築やデータ分析基盤などを担当。2019年4月よりマーケティング本部においてデジタルマーケティング施策に携わり、カルビー公式アプリ「ルビープログラム」をリリース。2023年4月より現職。最近、ベランダで鉢植えの「びわ」を育て始め、収穫できる日を楽しみにしている。パン作りもかなりの腕前。 DD:現在のダウンロード数はどれくらいでしょうか。 関口:昨年9月時点で53万ダウンロードとなっています。実は、プロモーションはまったくしていません。我々の商品は「パッケージの裏」がコミュニケーションスペースになっているので、そこに「ルビーキャンペーンをやっている」といった情報を入れたり、マストバイキャンペーンなどは必ずルビープログラムの会員になっていただくなどの動線設計で数字を増やしています。 DD:昨年実施された「カルビー総選挙」も話題になりましたが、こちらもルビープログラムを通る形だったんですか? 関口:総選挙もルビープログラムから応募いただく形にして、総投票数は72万を超えました。ことしは大規模なキャンペーンも実施しており、今まで接点がなかったお客さまもルビープログラムに入ってきていただいています。 ルビープログラムのアプリは、キャンペーンが終わっても会員数があまり落ちないという傾向があります。これはアプリ内でコンテンツを楽しんでいただいているからだと考えられます。 ルビーポイントで体験できることはカルビーらしい「収穫体験」やオリジナル商品の詰め合わせプレゼントなどがありますが、新しいコンテンツとして自分が食べた量が会員のなかで何位なのかが分かる機能をリリースしました。 これは本当におもしろくて、たとえば一般的には「1週間に〇個買うお客さまはヘビーユーザー」など、ヘビー・ミドル・ライトの分析がされますが、ルビープログラムアプリのなかでは、毎日1個以上、「折りパケ」をアップロードされる方が少なくありません。ヘビーどころではないですよね。 全体では1日に万単位でアップロードいただいています。厳密にいえば、家族や友人に協力してもらった(商品の空き袋をもらった)、といったこともあるかもしれませんが、開封いただいたことに変わりはありません。自分のランキングが上がっていくような仕組みは、やはり楽しんでいただけていると思います。 DD:ルビープログラムがスタートしたことで、施策の枝葉が広がりましたね。 関口:まさにその通りで、お客さまが召し上がった商品が分かるというのは画期的です。顧客理解につながることで、次の顧客体験を設計することができるようになりました。 何かキャンペーン施策を打って、お客さまと一時的につながることはできます。一方で、継続的につながり続けるのは難しいですが、ルビープログラムはそこを超えてきたという感覚です。