楽天は「黙っていれば得をする」立場だ…それでも三木谷氏が"ふるさと納税問題"で総務省に喧嘩を売ったワケ
総務省がふるさと納税について、2025年10月からポイントを付与する仲介サイトでの募集を禁止することを発表した。これを受けて、楽天グループは撤回を求める署名活動を行なっている。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「実はこの政策で得をするのは楽天だ。三木谷氏は黙っていれば得をするのに、わざわざ総務省に喧嘩を売ったことになる。その理由は経済人としての矜持からではないか」という――。 【この記事の画像を見る】 ■5万4000円の寄付で1万590円のポイント 最初に自分の体験を紹介します。先日、ふるさと納税でプロテインを購入しました。正確には川越市に5万4000円寄付をしたので、返礼品にプロテイン4kgが送られてくることになるというのが正しい記述ですが、利用者感覚ではふるさと納税はインターネット通販そのものです。 ここが今回の論点になる話なのですが、この日はさとふるで「24時間限定キャンペーン」をやっていて、結論としては私は寄付の結果、1万590円分のPayPayポイントをもらいました。びっくりするほど得をした感覚です。 そしてこの記事の本題です。総務省はこのようなポイント還元を問題視して来年10月からポイントを付与する仲介サイトでの寄付の募集を禁止すると発表しました。この告示が出された直後、楽天グループは反対するネット署名の募集を開始しました。 総務省から見れば、 「せっかくの寄付金なのに自治体で使えるお金が少なくなるのは問題だ」 ということでしょうし、楽天から見れば、 「民間企業の活動にいちいち国が口出しするほうが問題だ」 ということでしょう。 そして利用者や返礼品で売上を増やした地場の企業から見れば、 「地方の特産物を楽しめる制度ができたかと思ったら、次々と改悪されてだんだんお得ではなくなる。ふるさと納税制度がつまらなくなることが問題だ」 という問題があります。 ■自治体が手にする寄付金は約4割 わたしの体験のように、5万円ちょっと寄付したら1万円キャッシュバックされたというのは直感としてはお得すぎるので総務省の言い分が正しいように思えるのですが、本当のところはどうなのでしょう? この結構複雑な問題について経済の視点で解明してみたいと思います。いったい誰が正しいのでしょうか? そもそもふるさと納税でわたしが寄付したお金がどこに行くのか。そこから調べてみましょう。ふるさと納税で寄付したとします。このうち返礼品の仕入れ値は30%が上限と決められています。どの自治体もだいたい上限の30%近辺で返礼品を選んでいます。返礼品を送るためには発送コストが10%弱かかるようです。 そして各自治体は返礼品を掲載するふるさと納税サイトに利用料を支払いますが、推定でこの利用料が寄付額の2割前後だとされています。結果、各自治体が手にする寄付金は寄付額合計の約4割というのが実情です。 「4割しか寄付金が集まらないのでは、やる意味がないんじゃないの?」 と思うかもしれませんが、実はそれだけではありません。ふるさと納税の仕組みはよくできているのです。