ポテトチップスのパッケージが顧客情報の宝庫に。 カルビー が「ルビープログラム」で目指すコミュニケーションの形
情報の「鮮度」が正しい顧客理解につながる
DD:いろいろなキャンペーンを実施されていますが、マーケティングで大切にしていることはなんでしょうか。 関口:私がマーケティングで重要だと思うのは顧客理解ののち、お客さまが考えられていることを「どうトレースするか」です。それには情報の「鮮度」が重要で、我々の商品でいうと「食べてすぐ、パッケージを捨てる前」ということになります。ここで鮮度の高い情報が取れるので、ルビープログラムは非常に有効なのです。 DD:鮮度が高いというのは、いつ誰が何をどれだけ食べたかが、リアルタイムに分かるということですね。 関口:あとはお客さまの嗜好性もですし、「折りパケ」にして画像で送ってもらうシリアルコードは元々カルビーのトレーサビリティを担保するもので、どこの工場のどのラインで何時何分につくられたものかなどの情報が入っています。そのコードが届くため、たくさんのデータがとれるわけです。 リアルタイム性でいうと、「折りパケ」の画像を送るのはお客さまがパッケージをゴミとして捨てる前のアクションになるので食べ終わってすぐの行動だと捉えています。 DD:前職はエンジニアとのことですが、そのような考え方はこれまでのキャリアも影響しているのでしょうか。 関口:当時は検索エンジンなどを扱っていたので、まさに鮮度のある情報かどうかが重要でした。古い情報はお客さまの不利益となるので、情報の鮮度は今でも重視しています。お客さまの情報鮮度が高いほど、次の施策を正しく打つことができます。 そういった意味で、「販売店検索機能」も追加しています。この商品をどこで買うことができるか、自身の現在地から近い店舗の配荷情報を知ることができる鮮度の高い情報です。 カルビーのお客さま相談室にくるお問い合わせで一番多いのが「どこに売っていますか」というものです。ポテトチップスだけでも毎年100種類以上が発売され、とくに限定商品などは「近所のお店に売っていなかった」というケースも少なくありません。「買いたいのに売っていなかった」というネガティブ体験をできるだけ減らす機能として、こちらも好評です。 DD:デジタルならではのコミュニケーションですね。 関口:私は「ハガキの世界観」も重要だと思っています。経験があるかもしれませんがハガキで何かに応募するとき、マーカーで縁取りしたり、絵を描いたりして担当者の目に留まるようにいろいろ工夫されたことありますよね。 その「熱量」は、やはりアナログならではの魅力です。ルビープログラムのアンケートでも、アプリからとても細かく熱量のあるコメントを送ってくださるお客さまもいらっしゃいますが、課題としては「ハガキの熱量」をデジタルでどう拾うかだと思っています。コミュニケーションがデジタルで完結するのがよいともいえません。 DXの観点からしても、データのつくり方がどうしてもメーカー寄りになってしまいます。たとえば出荷はケースですから、管理する単位は「ケース」ですが、お客さまは1袋。データの考え方が違うので、お客さまが知りたいデータがそもそも存在しません。 ですから、もともとある「納品データ」を活用して、先ほどお伝えした「販売店検索機能」にアレンジしてお客さま向けに活用しています。 DD:アナログも重要だということですが、お客さまとのリアルな接点も増えているのでしょうか。 関口:ルビープログラムの最初の考え方はロイヤルティの高いお客さまに、より購入いただくというような考え方でしたが、今は変わってきました。昨年末、商品開発をするにあたり、ルビープログラムの会員のなかからスクリーニングして数名にご来社いただきました。 遠方では、富山県からいらしていただきましたね。ざっくばらんにお話しさせていただき、いろんなご意見をいただきました。今は「インサイトをどう分析し、形にするか」を取り組んでいるところです。 ルビープログラムを通して我々が実現したいのは、ハガキをデジタル化することではなく新たな価値の創造です。売り上げもそのひとつですし、お客さまとの関係性を太く、広くしていくのもそのひとつ。そこを変えていくのが我々CXチームのミッションで、社内でも期待されています。 DD:社内でも軸となるプラットフォームになったということですね。関口氏にとってマーケティングのおもしろさは何ですか? 関口:お客さまは一人ひとり、思考も嗜好も異なります。それぞれの生活のなかで何を考え、どのように行動するのか、分析するのはおもしろいです。 その人が何かを思ってその商品を買ったのか、あるいは周りの何かが影響してその商品に行きついたのか。その周りとはどんなもので、そこにどんなアプローチをすればさらなる購買につながるのか。いろいろな施策を試すことで、それらが見えてくるのがおもしろいですね。 左からルビープログラムの企画運営を行っている、CXチームの納谷 悠毅氏、花岡 歩美氏、関口氏。 Written by 島田ゆかり Photo by 三浦晃一
編集部