関根潤三に請われヤクルトのコーチとなった安藤統男は、選手たちに激高「おまえらそれでもプロか!」
すると安藤は白い歯をこぼした。 「関根監督の2年目、88年のオフには長嶋一茂もこのキャンプに参加しました。彼はいつもブツブツ、ブツブツ文句を言っていました。ノッカーが『それぐらい捕れ!』と怒鳴ると、『オレはスーパーマンじゃないんだよ』とふてくされ、レフト方向への高いフライを打ち上げると、『オレはフリスビーの犬じゃないんだよ!』と文句を言っていました。今はテレビで売れっ子だけど、あの頃から独特のユーモアセンスがありましたよね(笑)」 ノックが終わると、馬場平でクロスカントリーを行なう。アップダウンの激しい急勾配をひたすら走る。それを何周も繰り返す。選手たちの疲労はピークに達していた。 「この伊東キャンプは、かつて長嶋(茂雄)さんがジャイアンツ監督時代に行なっていたものです。関根さんは長嶋監督時代のヘッドコーチでしたから、その時の経験を採り入れたんでしょう。当時のヤクルトは若い選手が多かったから、多少の無理をしても大丈夫。彼らにはまず、プロとしての体力を身につけさせたかったんでしょうね」 【練習嫌いだったボブ・ホーナー】 就任1年目となる87年、シーズン途中で加入したのがボブ・ホーナーだった。現役メジャーリーガーの加入は、池山、広沢のいい手本となる。安藤もまた、その実力に素直に脱帽していた。 「タイガース時代にはランディ・バースも目の当たりにしていたけど、ホーナーはモノが違いました。とにかく穴がなかった。どんなコースでもヒットに、ホームランにできました。来日1戦目のタイガース戦で仲田幸司からライトに、2戦目では池田(親興)からの3連発でレフト、左中間、バックスクリーンにホームランを打ったけど、まさにどの方向にもホームランが打てた。あんなバッターは見たことがないですよ」 しかし、苦笑いを浮かべながら、「ホーナーは本当に練習嫌いだった」と振り返る。 「試合前の練習も、2~3本走って終わり。バッティング練習も毎日するわけじゃなくて、しないときもありました。試合中も、3打席終わると勝手にスパイクも靴下も脱いで、バケツに入れた水の中に足を浸している。それを見ていた若松(勉)が、『安藤さん、また始まりました』と私に言ってくる。関根さんに伝えると、『しょうがないな、代えよう』となる(笑)」