元「大河」俳優や元「紅白」歌手も… 「過去の栄光」がうみだした“闇” 日本で唯一「死刑判決」を受けた俳優とは【戦後犯罪史】
今年4 月、栃木県那須町で夫婦の遺体が発見された事件では、容疑者として「元俳優」という肩書きの若い男が逮捕・起訴された。芸能界のスポットライトを浴びた人物が殺人事件の容疑者として逮捕された例は過去にもいくつかある。『紅白』出場歌手は愛人を絞殺し、元人気子役は金融業者を殺して金を奪った。しかし、殺人容疑で逮捕・起訴され「死刑判決」を受けたのは一人しかいない。それが「仙台幼児誘拐殺人事件」の元俳優、天津七三郎だ。彼はなぜ、幼児を殺めるに至ったのだろうか? ■大河ドラマ『軍師官兵衛』出演俳優が殺人に関与の疑い 2024年4月30日、栃木県那須町で焼損した2体の遺体が見つかった事件で、逮捕された容疑者のうち1名は「元俳優」だった。この元俳優Wは、2012年に9歳で子役としてデビューし、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で主人公の幼少時代を演じた。しかし、2018年頃から出演作が途切れ、芸能界からフェードアウト。その後、短期間で奈落の底に落ちるような人生を歩んだようだ。 Wは殺人容疑で逮捕されているが、2024年6月時点で起訴されているのは死体損壊の疑いのみである。しかし、戦後の日本において芸能人、もしくは元芸能人が殺人罪で起訴され、有罪判決を受けた例がいくつかある。 ■殺人事件を起こした芸能人たち 1970年代には、歌手・克美しげるによる事件があった。克美は1960年代中期に『NHK紅白歌合戦』に2度出場したが、その後は人気が低迷。やがて借金を抱えるようになり、不倫関係にあった女性Oさんに金銭を貢がせるようになった。Oさんは、克美に多額の金を渡すためにソープランドで働くようになる。 1975年、所属レコード会社がくすぶっていた克美を再プッシュするプロジェクトを始めることになった。その頃からOさんは、克美の仕事現場に堂々と顔を出すようになっていた。不倫関係がマスコミにバレたらせっかくのチャンスが台無しになる。Oさんの存在が煩わしくなった克美は、翌年5月に彼女の首を絞めて殺害。まもなく逮捕され、裁判で懲役10年の刑を受けた。 1999年には、かつての名子役が人を殺めた。70年代にテレビドラマ『子連れ狼』(日本テレビ系)で拝一刀の息子・大五郎役を演じて注目を浴びた西川和孝は、高校卒業後に芸能界を引退。その後、スイミングスクール経営者を経て、一時は市会議員となり「あの大五郎が政治家に」と再び注目を集める。 しかし、西川の議員活動は長続きせず、新たに雀荘を開業するもそれもうまくいかなかった。資金難に苦しんだ挙げ句、金融業者の男性を殺害し、現金500万円を強奪した。犯行後、海外に逃亡した西川はタイで身柄を拘束され、強盗殺人・死体遺棄などの罪により無期懲役の判決を受けたのだった。 そして他にもうひとり、“元芸能人”の殺人者がいる。その人物は、日本においてただ一人、無期懲役より重い罰、つまり“死刑”が相当だと判断された“元芸能人”である。